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第40話 強行軍
■沖永良部島 大樹ダンジョン 内部空洞 第1セーフエリア
「緊急ブリーフィングを始めます」
小松原三佐の一言で、食事を急いで終えた俺達はセーフエリアの一画に全員が集まった。
緊張した空気が伝わってくる。
「外の状況で変化がありました。航空自衛隊、米軍が大樹ダンジョンから飛びだったワイバーンと遭遇し、戦闘を行い撃墜されました。ワイバーンも数体倒せたそうですが九州へ向かっているとのことです」
「現代兵器よりもモンスターの方が強いのか……」
「ここからの話は口外禁止ですが、上野の地獄門ダンジョンから出て来たのはゴブリンやオーガだったので自衛隊の装備でもある程度は何とかなりました。ただ、ワイバーンは鱗の強度が高いために苦戦を強いられたとのことです」
小松原三佐からの言葉は重かった。
ダンジョンの脅威を俺達はどうにかできているが、冒険者でもない一般人にとっては未曾有のできごとだろう。
スタンピードの恐ろしさを以前は実感できなかったが、俺はこの時になって改めて強く感じた。
「そのため、できる限り避けたかったことですが、強行軍を行います。一夜の睡眠をせず、1時間の仮眠の後で出発します。大樹ダンジョンの攻略を最優先にいたします」
小松原三佐の言葉に全員が頷く。
『まぁ、仕方ないよね~。今ネットニュースとかでも盛り上がっているし、ダンジョン庁も大忙しだぞ~』
「ならば仕方ないか、あとはこの疲労などが他に影響が出ないかだけが心配だな」
『そこはそれで仕方ないよねぇ~サグルとトーコ先生は〈自己再生〉で疲労も軽減されるんだっけ?』
「ああ、だから、織香が心配だな……」
「サグルさん、今回は最後まで一緒ですからね!」
「あら、わたくしもダンジョンコアを見てみたいですので最後までお付あいいたしますわよ」
俺が不安を口にしたら、織香がグイッと近づき右腕に絡んできて、その後スメラギが左腕に絡んできていた。
「オホン……まだブリーフィング中なので、私語は謹んでください」
咳ばらいをした後、小松原三佐は丁寧に注意をしてくるがこめかみがピクピク震えているのが見える。
怒らせたらいけないと思っていたのにこれは不味い。
「す、すまない……それで隊列とかそういったのはどうするんだ?」
「安全に調査をするのが当初の目的でしたが、急ぎ最上階を目指します。そのため、先ほどまでと同じように前方にクラガリ探検隊+スメラギさんの突破陣形で行きます。後詰をしながら、自衛隊とスメラギさんのパーティの残りが進んでいく形にします」
「わかった、それじゃあ1時間の休憩だな?」
「はい、それで……では、解散!」
■沖永良部島 大樹ダンジョン 巨木内部
1時間後、俺達はダンジョンの中を進んでいた。
太い根や枝が階層の足場を形成し、光る苔がところどころにある神秘的な光景が広がっている。
だが、綺麗な光景を楽しんでいる余裕は俺達にはない。
外部の状況が状況だけに急ぐ必要があったのだ。
「飛行している敵が多いの厄介だな……その分、迎撃が楽だが」
俺は〈火炎弾〉を飛ばして、リーフドラゴンを撃墜していく。
リーフドラゴンは〈毒の鱗粉〉を出すモンスターなので、早期対処が必要だ。
「俺は〈毒耐性〉もあるからリーフドラゴンは俺に任せろ、全部駆逐していく!」
:やばい、スコップ師匠がかっこいい
:トゥンク!
:これぞ、スコップ無双(ただし、スコップ未使用)
:どういうことだよw
コメント欄が盛り上がる中、俺は先頭を走る。
進行速度が上り、自衛隊たちとの距離が離れていった。
:久々に来たー!
:みんな、覚悟のない奴は配信をみるなよ? 絶対に見るなよ?
:やば、気持ち悪く……
俺の進行速度を追いかけていたドローンの勢いにコメント欄が荒れ始めたようだが、詳しく見ている余裕はない。
そうしていると、次の安全地帯の前のボスであろう巨大なトンボが姿を見せた。
〈潜在能力:超鑑定〉で見る限り、俺なら余裕で倒せる相手である。
「悪いが時間がない……食わせてもらうぞ」
アダマンタイトスコップを振り回した俺は、トンボを食べるために襲い掛かるのだった。
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