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第42話 仄暗い闇の迷宮
■沖永良部島 大樹ダンジョン 闇の迷路
セーフエリアから出発した俺達は早速苦境に立たされた。
今までダンジョンで灯っていた光の一切ない空間が目の前に広がっている。
「ヘッドライトで少し前くらいは照らせるが、先までは全然見えないな。せっかくの〈飛行〉もこの空間では使いづらいな……暗視系のモンスターを食うか」
「もう平然と食べること前提にしてますね」
「ここまで来たら割り切れる」
暗い通路でバラバラに行動するのは無謀ということで、チームごとに固まって移動をしていた。
自衛隊からもらったサイリウムのような折ると光るものを預かり、先頭をすすむ俺達のチームが光源の確保をしていく。
「急ぎたいところだが、そうもいかないのが歯がゆいな」
「そうですね、さっき走ってみたら槍が出て来たので嫌らしい仕掛けです」
織香が俺の言葉に同意を示し、槍がカスって傷ついた腕を見せてきた。
素早い動きができる織香をも捕えるのであれば、俺はあっというまに穴だらけになるだろう。
ちなみに、スメラギは自分のチームに戻ってチームメンバーのガードに回っているので、ここに居るのは織香とトーコと俺の3名だ。
「ちっ、こっちも行き止まりか……」
『わかりました、ルートを変えていきましょう。分岐点で待ちますので戻ってきてください』
「〈潜在能力:完全製図〉でも、わからないのは困ったな」
『わかるにはわかるんですが、変化し続けているんです。追いかけきれないため、実際に探ってもらうというアナログな手段をとることになっていてすみません』
小松原三佐からの言葉に俺も頭を悩ませる。
こういう場合の対処法をどうするかすぐには出てこなかった。
「サグルク~ン、私に一ついい考えがあるんだけれどいいかな~?」
:そのセリフはフラグだよ。トーコ先生!
:イボンコ、ウッホッホ
:イボンコ、ウッホッホ
トーコの言葉にコメント欄が反応を見せるが、俺にはネタが分からない。
イボンコってなんなんだ?
「〈粘着糸〉あるよね~? それをサグルクンの〈炎の吐息〉で燃やして燃えるロープを作ってみる方法だよ~」
「なるほどな……確かに随分遠くまで伸ばせるからいけるか?」
「〈粘着糸〉の扱いはワタシの方が上だから、ロープを作るのはやるよ~」
「わかった、頼んだ」
トーコの意見を採用し、やってみる。
悩むよりもまずは実践・反省・改善のサイクルを回すのが優先である。
失敗を恐れていてては、新しい道は作れない。
「そ~れ、はしご~」
あやとりの要領で〈粘着糸〉を操作したトーコは暗闇の先にある壁と近くにある壁を結ぶはしごを作り出した。
「これに、着火!」
俺が〈炎の吐息〉で火をつけると床の方に作り上げられた〈粘着糸〉が赤く燃えて炎の絨毯のように広がる。
かなり明るくなり、壁のあたりに潜んでいた黒いトカゲが逃げていくのがみえる。
「逃がすかっ!」
今度は俺の方が〈粘着糸〉で逃げ出す黒トカゲを足止めした。
「トカゲか、ちゃんとした肉は久しぶりだな」
「いえ、トカゲのお肉はちゃんとした肉とは言えないと思いますよ?」
織香のツッコミをよそに俺は黒トカゲを捕食することに決める。
〔シャドウゲッコーの捕食に成功しました。〈暗視〉レベル1を手に入れました〕
アナウンスが聞こえてきて、俺はまた一歩、人間から離れていった。
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