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ただいま
「ただいまー」
「おかえりー」
今日の夜も会社から帰って来た元気がいいあの女の声が聞こえた。
いつ聞いても耳障りな声だ。
夫の方が早く会社から帰って来て暫くしてあの女が帰って来る。
私とは違ってあの女は家庭より仕事を優先している。
家事はいつも夫がほとんどやっている。
それなのにあの女の何処がいいのか?私には理解不能だ。
そしてあの女と夫はいつも私の目の前で愛し合う。恥ずかしくはないのか?
夫もあの女も楽しそうに笑っている。
夫もあの女も私がこの家にまだいるのに私を無視している。まるで夫婦のようだ。
ただの愛人のくせに。
一年前からずっと愛人はここで夫と暮らしている。
私は夫にも愛人にも無視されている。
表札も変わっていた。わたしの名前は表札には書いてない。
私は愛人に負けたのだ。料理もできないあの女派手な化粧のあの女に負けたのだ。
私は「どうして?私を裏切ったの?何で浮気したの?私はずっと料理も洗濯も掃除も完璧にやって来たのに。ずっとあなたが好きで頑張って来たのに。
何で私を無視するの?私は夫と愛人に無視されてもここに居座るずーっとね。あなたが好きだからこの家は二人で節約してお金を貯めて建てた家なのに何で愛人が二人の思い出の家に住んでるの?
おかしいでしょう?あなた!なんとか言ってよ無視しないで。何で表札も今井司 愛美になってるの?
私の名前の由美って書いてある表札を何で外したの?
愛人のくせに表札に名前を載せるなんて!
これじゃあまるで夫婦みたいじゃない!ねえあなたいつまで無視するの!」
その時、夫が一瞬私を見たような気がした。
「私、先にお風呂入るね」
「お風呂沸かしといたからその方がいいよ。疲れが取れるからね。じゃあその間に夕食のおかず温め直しておくよ」
「ありがとう」
彼女がお風呂に入っているのを確認してから
夫は私の近くにやって来た。
何やら私に怒っている様子だった。
続く
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