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ここの家の父さんは朝が早くて、遅くても四時には起きて来ます。
なので四時になるとミルクとツナが餌くれ餌くれの大合唱を始めるので、私もその時間に勝手口の前で父さんを待つ様になりました。
これも後で分かった事なんですが、ミルクやツナよりかなり豪勢な食事を出してくれていたみたいで、野良の私の体力回復を願って食事を作ってくれていたようです。
父さんや母さんが作ってくれる豪勢な食事のお陰で私の体力は見る見る回復し、目の瞬膜の腫れも退いて抜けていた毛も生えそろい元気になりました。
食事の後にチュールをくれるんですが、その時にシャンプータオルで拭きまくられるのが苦手です。
まぁでも私の衛生環境の悪さを考えて拭いてくれる優しい父さんや母さんの気持ちを考えるとシャーと言える立場でもないので黙って我慢して拭かれておりましたが、ここの母さんは父さんに比べるとかなりしつこいので、偶に母さんにはシャーと言ってしまった事があります。
父さんは夜も9時を過ぎると寝てしまうので、私の訪問が遅い時の晩御飯は母さんが出してくれます。
偶に福の奴に見つかって追いかけられ、何日か行けない日があったんですが、その時は父さんも母さんもとても心配してくれて、私は物心がついて初めて愛されるというのを知ったのです。
過去の朧気な記憶にも確かに人間がくれた愛情の様なものもあったのでしょう。
でも私にとって明瞭と言えるのは、ここの家族の愛情こそが、私の知る唯一の愛だと云う事です。
私はスキンシップが嫌いでしたが、ここの家族の皆さんにだけはそれを許せる気持ちになりました。
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