死の山

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 田辺は車を脇道に置くと、周囲を警戒しながら降りた。助手席から田辺の相棒の片岡も降りた。図体がでかく高圧的な田辺に対して片岡は小柄で小心者だった。  時刻は深夜二時を過ぎていた。田辺は眼前に聳え立つ巨大な山を凝視すると片岡に語気を強くして尋ねた。 「おい、この山で合ってるんだろうな?」 「はい。僕の情報によるとこの山で間違いありません」  田辺は片岡を蛇のようにきつく睨んだ。 「もし間違っていたら、おまえも殺すからな。分かってるな?」  片岡は萎縮してぼそりと呟いた。 「やめてくださいよ、田辺さん。僕、まだ死にたくないです」  田辺はトランクを開けると大きなシャベルを二つ取り出して、片岡に一つ手渡した。二人でトランクの中に横たわっている死体に視線を向けた。 「今回は事故みたいなもんだ。こいつは殺されて当然だ」 「でも、この人は可哀想ですね」  片岡は鬱蒼と茂る山の中に入っていくと、樹齢数百年もするであろう大木の後ろの地面を掘り始めた。田辺は片岡の所まで行くと、同じように掘って行った。そこは田辺が組織幹部の中崎から死体が絶対に発見されないと教えてもらった場所だった。 「今回の事件はおまえも共犯だからな。実際、死体遺棄におまえも手伝ってるわけだから」 「僕は田辺さんに逆らえないから手伝っているだけですよ」  田辺が眉間に深い皺を寄せると悪魔のような表情をして片岡の首を掴んだ。片岡は急に掴まれて意識が飛びそうになるのを堪えると、田辺の手を解いて深く呼吸した。 「警察にそんなこと喋ったら、俺はおまえを探し出して必ず酷い目に合わすからな。両目を釘で潰して顔に血のシャワーを浴びせてやる」
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