死の山

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 片岡はその言葉を聞いて全身に鳥肌が立った。田辺は今までどんな時も冗談を言ったことはなかった。両目を潰される映像が頭に過ぎって片岡は顔が真っ青になった。 「勘弁してくださいよ、田辺さん。僕、絶対、警察にそんなこと言いませんって。助けてくださいよ」 「この山が死体を捨てるのにいいと言ったのは、おまえだったことを忘れるなよ。この山に捨てた死体は見つからないと言ってたよな」  片岡は田辺の威圧感に気圧されながらも頷いた。 「この山は組織も死体遺棄にこれから利用しようと思っていた所みたいです。信頼が置ける中崎さんに勧められました。大丈夫です。僕を信じてください」  その言葉を聞いて用心深い田辺もやっと安心した。中崎は古くからの馴染みで田辺も信用していた。  田辺は組織から命令されてターゲットを恐喝することを生業としていた。田辺がやった仕事で恨まれることは数え切れないほどあった。  田辺は数時間前、組織から依頼されて恐喝した奴が怒り狂って殺しに来た所を返り討ちにして殺していた。田辺は片岡と一緒にトランクに死体を放り込んで、この山で捨てる予定だった。  田辺は恐喝はするが人を殺したのは初めてだった。もしも死体が見つかることがあれば田辺は片岡に罪を着せようと思っていた。  田辺と片岡はシャベルで黙々と暗闇の中で地面を掘り続けた。掘っている時に妙な感触を覚えて、スマホのライトを点灯させた。そこで事態が急変することになった。
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