死の山

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 死体を埋めようとした穴から夥しいほどの切断された手足が表出していた。常に冷静な田辺も唖然として言葉を失った。片岡はそれを見て激しく嘔吐した。 「おい、これ全部、本物なのか? 何十人ここで死んでるんだ?」  田辺が穴の中に降りて、死体と化した手におそるおそる触れると、土の中から頭蓋骨も出てきた。もはや人間の頭部とは思えないほど様変わりした骨の塊が姿を現した。  血は完全に乾いていて、地面は黒く澱んでいた。切断された手足は長い間、放置されていたせいで変色していた。  片岡が田辺に咽ながら声をかけた。片岡は恐怖で体が竦み上がっていた。 「田辺さん、ここやばいです。こんなに死体があるなんて異常ですよ。他の所にしましょう」  田辺は死体に囲まれて吐き気と目眩がした。他の所にした方が賢明だと判断してすぐにその場を立ち去ろうと車に乗り込むと、背後から声が聞こえて、田辺も片岡も身震いした。 「お兄さん達、ちょっと、ここで何やってたの?」  田辺が運転席に座りながら後ろを見ると懐中電灯を持った警察官がそこにいた。田辺はここで捕まったら刑務所送りだと思って、アクセルを踏み込んだが、警察車両が眼前にやってきて衝突寸前で止まった。
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