01.こんな運命があるのか

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01.こんな運命があるのか

 やかましいと思うくらいサイレンが鳴っている。横に視線を向けると、そこには幼馴染の成瀬が血を流している……かもしれない。俺の視界はかすんでいて、よく見えない。それに、頭もボーっとして、重く感じる。そんな中、昔の思い出が鮮明に頭の中で流れた。  俺は剣地。子供の頃に両親が死んで、孤児になった。何で両親が死んだのかは分からない。まだ二歳か三歳ぐらいだ、記憶がないのは当たり前だろう。孤児院の先生が言うのは、車の事故で死んだと聞いた。俺もその時車に乗っていたらしく、助かったのが俺だけだったらしい。  成瀬は俺の幼馴染、ずっと昔からこいつと一緒にいた。周りからこいつら、カップルじゃないのかとちょっかいを出されたりしたけど、俺はあんまり気にしていなかった。成瀬は父親が事故で死に、母親がその後を追うように病気で亡くなったと話を聞いた。  それよりも、何で俺ら死にかけているんだ? そう思っていると、走馬燈がさらに進んだ。小学校の記憶、中学校の記憶から、さっきの記憶が映った。あー、鉄骨が落ちてきて、俺らに当たった。ああ……こんな理由で、こんなタイミングで、俺らは死んでしまうのか。そう思う中、俺は気を失った。 剣地:謎の空間 「……じ……剣地!」  成瀬の声が聞こえた。俺は頭をさすりながら、立ち上がった。 「何だ、俺ら助かったのか?」  生きていてラッキーと思いながら周囲を見回したが、そこは事故現場ではなく、ただ真っ白な空間が広がっていた。 「何ここ? 天国?」  成瀬がこう言った。うーん……何もないし、俺ら以外に誰もいないから……天国かもしれないな。 「かもな。とりあえず、そこら辺ぶらぶらしようぜ。何かあるかもしれないし」  俺は成瀬を呼び、一緒に歩き始めた。そこからずっと歩きだしたが、周りの光景は何も変わらない。誰かが現れるわけでもない。ただひたすら、俺と成瀬の足音が響くだけだった。 「全然景色変わらないね」 「そうだな、天国ってこんな感じなのか? 思ってたよりも寂しい所だな」 「いや、違うぞ」  誰かの声が聞こえた。俺と成瀬が見回すが、誰もいなかった。 「なーんだ、空耳か」 「でも、私にも聞こえたよ。はっきりと」 「あーちょっと待って、今姿見せるから」  再び声が聞こえた。その直後、長く、白いひげを生やしたでかいおっさんが現れた。軽い口調だが、威圧感がすごい。でかいから。というわけではなく、どこからか大物のオーラを放っていた。 「わしは神である」 「か……神様……」 「と言っても、多数いる神のうちの一人じゃが」  そう言った後、神様は腰を下ろした。この時、俺は神様から威厳を感じなかった。まるで、普通のおっさんのような姿だったからだ。 「よいっしょっと……ふぃー……あー、君たちも座りなさい。重要な話をするから」  神様は俺たちを座らせた後、何かの力で丸型の机と、お茶を出した。机の中央には、丸い皿と醤油煎餅が置かれていた。 「自由に食べていいよ」 「は……はい。いただきます」  成瀬はそう言いながら、ゆっくりとお茶を飲み始めた。 「最初に君たちに詫びたい。本当に申し訳ない!」  神様は土下座をし、俺たちに詫びを入れた。俺と成瀬に何かやらかしたのか? 「いやー、実はわしの手違いで、君たちを死なせてしまったのだ」  どうやら、この神様の手違いのせいで俺と成瀬は死んでしまったようだ。話を聞いた俺は鼻水を垂らしたし、成瀬はお茶を吹き出して驚いている。 「何でそんなことが? つーか、うっかりミスで俺らを死なせるなよ!」  俺がこう聞くと、神様は少し困りながらこう言った。 「えー……その……ちょっと……あれで……とにかくわしの記入ミス……みたいな……実は寿命を間違えて……ごほん。君たちの寿命を間違えて書いてしまったのだ」 「じゃあ今すぐにでも蘇ることができるのですか?」 「無理じゃのう。君たちの死体、結構えぐいことになっているよ。骨は折れていて、でかくて重い物が頭に直撃したからそこから」 「止めてください。これ以上聞きたくない」  成瀬が耳を抑えてこう言った。そりゃそうだ。俺だって慣れ親しんだ自分の体が、とんでもないことになっているなんて、聞きたくもないわ。 「まー、わしのミスでこうなってしまったのだ、責任はとるが、少し話を聞いてくれ」  神様はそう言うと、俺と成瀬に紙を見せた。そこには転生地、ペルセラゴンと文字が書かれていた。ペルセラゴン? 聞いたことのない単語だな。 「実はの……ここに転生してもらいたいのじゃ」 「えーっと……ペルセラゴン?」 「君たちも好きだろう? 剣と魔法の世界じゃよ。ロマンはあると思うが、血なまぐさい所でもあるけど」  剣と魔法の世界? それって、ゲームや漫画で舞台になるファンタジーみたいなあれか? ああいう世界に行けるのかと俺はそう思った。成瀬はなんか嫌な顔をしていたけど、神様が俺の顔を見てか、こう言った。 「君の方はまんざらでもなさそうだね。でも、女の子の方が嫌がっているけど」 「嫌ですよ。私と剣地はただの人間です。漫画の主人公みたいな特殊能力は持ってないです。変なことがあったら、すぐにここへ戻ることになりますよ」 「それは分かっとる。そうならないように、君たちに特殊な力を授ける」 「特殊な力? それで、大丈夫ですか?」 「それは君たち次第じゃ。とにかく、わしのせいでこうなったのだから、とびっきりで最高なスキルを付けてやるぞ」 「お願いします! 力をくれるのなら、何でもいいです!」  俺は頭を下げてこう言った。成瀬もため息を吐き、頭を下げた。 「よし、ちょっと待っていてくれ、今スキル表を出すから」  神様は手を動かし、ゲームのようなウィンドウを宙に出した。 「今出したのはスキルの一覧じゃ。欲しいのを五つまで選んでくれ」 「えー? 五つまでですか?」 「これがわしから与えられるスキルの限界じゃ。詳しい話はペルセラゴンで聞くと思うから」  その後、俺と成瀬はスキルを選び始めた。スキルの数はざっと見で百以上はある。使えそうなものがあれば、何これと思うようなものもある。髭剃りマスターだなんて、誰が使うのやら。外れスキルだな、あれは。 「私はもう決めたわよ。早く決めてね」 「ええもう? ちょっと待って。もう少しリストを見せてくれよ」  成瀬に急かされ、俺はスキル表を見ながら、考えながら決めた。その時、俺はあることに気が付いた。あの世界で、どうやって生きていくのかと。 「なぁ神様、あの世界でどうやって生活すればいいか教えてくれよ」 「あの世界ではギルドと言う場所がある。仕事としては、困っている人の依頼を受けて、無事に成功すれば金を貰えるぞ。ギルドに入れば、金に問題はないと思う」 「ゲームでそういうシステムのゲームがある。それと同じだな。それじゃあ……」  俺は説明文を見て、スキルを決めた。俺が決めたスキルはこんなもんだ。 ・ソードマスター。  名前から言われた通り、剣に関してのスキルだ。全ての剣術と剣を使うことができる。 ・ガンマスター。  銃器の扱いと知識が詳しくなるスキル。拳銃だけではなく、スナイパーライフルやショットガン、バズーカなどが使えるという、素晴らしいスキルだ。 ・ナイスフェイス  異性からの注目を浴びるようになる。つまり、モテモテになる。素晴らしいスキルがあるものだ。 ・スカイウィング  空を飛べるようになる。自由に動けるとはいっても、魔力を消費する。 ・インフィニティポーチ  亜空間を作って、道具をしまえるようになる。これで、荷物の整理に困ることはない。  俺はスキルを決めた後、成瀬がどんなスキルを決めたか、聞いてみた。 「なぁ、成瀬はどんなスキルにした?」 「私はこうよ」  成瀬のスキル票には、こう記されていた。ご丁寧に、説明文も付いている。 ・マジックマスター・ネオ  全ての魔法を扱えるらしい。どうやら、魔力と言う力を使い、火、水、雷、風と言う自然魔法、地面を操る大地魔法、そして特別な力の光と闇の七つの魔力があり、それらを使うのが魔法と言うらしい。俺が考えているのとはちょっと違うようだ。 ・ゼロマジック  魔力を消費せずに魔法を使える。おい、マジックマスター・ネオと組み合わせるとチートのような魔法使いの誕生じゃないか。 ・ラブハート  相手に抱き着くことで、相手を癒すことができる。で、相手への好意があればその分だけ、癒す力は増す。何でこんなの選んだ? ・ブレイブソウル  スキル所持者がいるだけで、仲間のステータスが上がる。援護には最適だな。 ・ソードマスター  何だ、あいつも同じスキルを選んだのか。  以上だ。あいつは援護をするつもりだろう。スキルを決めた後、俺と成瀬は神様の元へ向かった。 「スキル決めました」 「うむ。じゃあ、さっそく君たちをペルセラゴンへ送るとしよう。その前に、もう一つ、わしからの詫びじゃ」  神様は俺に剣と銃、軽そうな鎧を渡した。成瀬には、剣と杖、緑色のローブが渡された。そして、金貨が入った袋。俺はインフィニティポーチを使い、袋をしまった。 「これは向こうの世界での最強装備じゃ。これなら、転生しても生きてゆける」  そう言うと、俺たちの足元に魔法陣が発生した。 「今から転生の儀を行う。君たちなら、すぐに向こうの世界の生活に慣れることができるじゃろう」 「いろいろとありがとな。神様も、ミス起こすなよ」  俺がそう言うと、神様は苦笑いをした。そして、魔法陣から発する光は強くなり、神様の姿は見えなくなった。 剣地:どこかの平原  気が付くと、目の前には草原が広がっていた。遠く離れた所には、見たこともない生き物が呑気に歩いていたり、空を飛んだりしていた。転生したのか。俺はそう思いながら、成瀬に話した。 「なぁ、どうする?」 「どうするも何も、人を探しましょう。私たちがこの世界に転生したって話を信じてくれたらいいんだけど」 「そうだな。ま、ゲームの最初でも、まず人に会って話をしろってのが最初だからなー」  その後、俺たちは人を探すため、歩き始めた。ペルセラゴンでの生活、うまくいくといいけど。
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