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普段あまり悩まないイエスズメだが、自分のしたことでジミーの人生が狂ったらどうしよう、2人の仲を引き裂くなんて非道な行為だ、等々としばらく悶々としていた。 しかし日が経つにつれ、その苦悩はあのイヌワシとは縁が切れたという安堵感にとってかわった。 イヌワシと関わるのは、スリルとリスクの両方に晒されることだった。 それでも、ジミーとスーザンの破局や映画出演の中止といった事実が報道される日が来るのを、怖れていた。 結局、それは杞憂に終わった。 ジミーのスキー映画「白銀のヒーロー」は公開され、ほどなくしてジミーはスーザンとの婚約を発表した。 イエスズメは自分の罪が帳消しにされて喜んだ。 「あの薬、効かなかったのね。それにスーザンが銀幕の女神の化身なんて、絶対嘘よ。大体、雪山の女神だって本当にいるの? イヌワシの一人芝居じゃないの?」 ただ、危惧された通り、ジミーは映画に出演したことでオリンピックの出場資格を剥奪された。 けれどもファンの多くは、映画の中で彼の勇姿が見られるならそれでいいと納得した.。 新聞は「アルペンスキーの若き王者、ジミー・テイラー、白銀の世界から銀幕の世界へジャンプ」と書き立てた。
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