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「あの人…管理職の言うこと素直に聞くタイプだったっけ?」
私は素直に聞いた。
お手本通りの団塊ジュニア世代特有の行動、「エリートに対して体育会系で挑む」タイプの人間であり、「エリートに対しての露骨な嫌悪感を示す」タイプであるT氏はとにかく管理職の言うことに反論し、まるで反抗期の中学生のような理屈を大声で喚いてはその指示を無視してきた。
そしてそれが正しいのだと体育会系のノリで若い衆に考えを押し付け、「みんな俺の言うことを聞いていれば救ってやる!何でも教えてやる!俺はカリスマ性がある!俺は反逆のカリスマ!若い奴らは俺を必要としている!」と言っていたような人間だ。
さて、ここで皆さんは疑問に思ったはずだ。
「五十代のおじさんがそんなこと言うの?」
「そう思ってるだろうってだけじゃない?」
「それってあなたの感想ですよね。」
と目をパチパチさせて思ったはずである。
違う。
違うのだ。
現実上記の台詞、一字一句ズレなく言っていたのである。
世の中は狭いようで広い。
そして広いようで狭い。
こんなことを言うおじさんが実在するのである。
話を戻す。
「Aよ。お前何も知らないのな。コレで二回目なんだよ。問題起こしたの。」
格下認定四十代の一人が頭を振りながらあきれた様子で私の顔を見た。
「知ってんよ。馬鹿にすんな。Tさんの暴力っつうかパワハラとかで若いのが辞めちゃった上に、管理職候補の奴まで一緒に辞めちゃったってヤツだろ?そんな問題にならなかったじゃん?とんでもない組織だよな。暴力まで振るった奴を庇うんだからよ。アレだろ?何かエリア長クラスの奴がTさんは必要な人間だ!なんて言って庇ったって話だよな。それが俺ら末端まで情報が流れてきて、Tさんの耳に入って…んで…あぁいう無敵の人になっちゃった…と。」
私もT氏の嫌がらせで気が滅入っていたのだろう。
格下認定四十代の一人から何も知らないと言われて大人気なくカチンときてしまい、矢継ぎ早にT氏の数年前のやらかし事案を話した。
全て知っているんだとアピールするかのように早口で言い終えた私を格下認定四十代の一人は、はぁとため息を吐いてうなだれた。
「やっぱなんも知らねぇじゃん…。ったく。」
そう言う格下認定四十代の一人を私は体を硬直させて全力で睨みつけた。
普段普通にきつ目の冗談を言い合う仲ではあるが、やはり私も参っていたのだろう。
「どういう事だ…。あ…?」
「ホントなんっも知らねぇな。お前は。それはTさんの機嫌を損ねてこれ以上暴れさせない為のおべんちゃらだよ。普通に考えて分からんかね…。このご時世パワハラっつうか暴力まで振るった奴を何の処分も無く済ますわけねぇだろうが…。」
格下認定四十代の一人の言葉に全身の力が抜けていく私、それを見る格下認定四十代の一人。
静寂が数秒流れた後、私が知らなかった真実が語られた。
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