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格下認定四十代の一人は語る。
T氏は有望な二十歳の男性に暴言を日々浴びせ続けた。
元々自分の感情や欲求を抑える事ができないT氏の行動はエスカレートして遂には暴力を振るうようになった。
誤解を覚悟で述べさせてもらうと、人を見下し、人に暴言を吐き、人に暴力を振るうのは一種の快楽を伴う。
それに踏み止まれなかった人間がこの手の人間である。
この手の人間は自分が楽しくなってしまうと日に日に楽しいことを加速してしまうのだ。
いじめっ子や猟奇犯罪者なども同じ心理だと思う。
これは個人的な考えだが、すぐに暴言暴力に走る生き物は「人にあらず」だ。
まだまだ未熟な子どもなどは仕方がない部分はあるのは認めるが、大人でそれはもはや知的生命体ではない。
アメーバなどの単細胞生物にすら及ばない。
T氏はまさにそれだったわけである。
T氏の暴言暴力に曝されること約一年、二十歳の若者はそれを苦に精神を病み会社に出てこれなくなり、そしてそれを人事課に包み隠さず伝えて退職してしまった。
その一年は彼にとっては人生最悪の年だっただろう。
そして彼と同期入社の管理職候補も「こんな人がいる会社で仕事はできない。」と人事に伝えて退職してしまった。
そして人事課からエリア長までこの一件は伝わった。
そこまでの大きな規模ではない私の会社においてエリア長とは役員クラスである。
ここから私は初耳だ。
事態を重く見たエリア長と管理職の面々は人事課を先頭にして調査を開始、その後T氏を危険人物として取り扱うこととなったわけである。
他部署への配転、当エリアからの追い出しを検討するがエリア長は苦渋の決断をする。
「彼は危険だ。仕事はある程度できるようだが、だからといって野放しにするわけにはいかない。ウチのエリアから出しては駄目だ。何とか気分を害させずに、且つ目を離さずに面倒を見るしかない。今の課、今の部からは絶対に出すな。今回は本人への内示無しで業務成績評価を最低ラインまで落とせ。それを懲罰とする。本人に気づかれない程度に徐々に落としていけ。ただし、今後何かあれば内示及び公表まで行った上で思い切った懲罰を与えよ。それに素直に応じなければこちらも容赦はしない。総務、人事総出で叩き潰す。」
という決断指示をくみ取り、人事課から打ち出された施策は
「あなたは必要な人間だ。辞めていった人間には申し訳ないが必要な人間が残ったまで。」
という趣旨を管理職上層部からT氏本人へ伝えるというものだった。
これに気をよくしたT氏の鼻は天高く伸びていき、間違った方向へと暴走することとなってしまったのだ。
恐らくエリア長ともなればエリート中のエリートだろう。
弘法にも筆の誤り、河童の川流れである。
エリア長は完全に判断を誤った。
T氏をここまでモンスター社員に仕立て上げたA級戦犯は役員クラスであるエリア長だったのだ。
結局T氏は軽くお叱りを受けた後に必要な人間だと言われるだけに留まった。
そしてそこからT氏は若い衆に贖罪の意を込めて飲みに誘ったり、バーベキューをしたりと飲み会魔となった。
飲み会魔となったもう一つの理由として、二十歳の若者と管理職候補が辞めてしまった際に当然T氏を敵視するグループが発生するわけだが、そのグループにあることないことを広められて立場が揺らぐ前に自分が出資した飲み会に若い衆を誘い、自分を敵視するグループの悪口を言いふらして味方として若い衆を囲う為でもあった。
だらだらと記述したが、要するに敵視するグループが発生した事にビビり散らかしたわけである。
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