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T氏は飲み会が好きだ。
飲み会が好きな人の心理を大まかに分類すると、
①大人数でワイワイ話をするのが好き
②今まで話せなかった人と話せるのが好き
③単純に酒類が好き
④話すのではなく語るのが好き
⑤諭すのが好き又は論戦が好き
こんなところだろう。
T氏は③〜⑤に当てはまる。
そして年齢ももちろん大きく関係してくるが、この性格を持ってしての結果会社外、プライベートでは友人がいない。
そしてバツイチで、再婚は遅かったこともあり子どももいない。
奥様はフルタイムで働いている。
つまりどういうことかというと、「暇人」なのである。
様々な趣味を持っているT氏なので趣味仲間などがたくさん存在しそうだが、熱しやすく冷めやすい性質とやはりこの性格が災いしてか、会社という離れようがない付き合いをしなくていい趣味仲間達は皆離れていくのだろう。
そんなT氏は休日にはしばしば若い衆、主に自分が格下認定した人間を誘い、飲み会やバーベキュー大会を開催する。
これだけ聞けば面倒見が良いおじさんと勘違いするが、その実は違う。
今回その真夏の真っ昼間、熱中症アラートが役所から発令されている中決行されたT氏主催のバーベキュー大会の様子をリポートしていく。
メンバーはT氏を含めて総勢10人。
開催時刻は昼の11時からで、場所はT氏の自宅から徒歩で20分程度の場所にある参加メンバーH氏(30歳バツイチ独身)の持ち家。
天気は朝から太陽が仁王像の如き憤怒の表情を浮かべる超晴天。
朝のワイドショーではネタが無いのか、馬鹿の一つ覚えのように有識者ぶったタレントどもがひたすら猛暑猛暑と叫ぶ。
「おいおい…コンロが汚いじゃねぇか…。おい、お前とお前、これもう一回洗ってこい。」
コールマンのディレクターチェアにどっかりと腰かけたT氏がテキパキと指示を出す。
ひじ掛けのドリンクホルダーには開栓済みの缶ビールがある。
もう始めてしまっているようだ。
若くして結婚したH氏はそれはそれは立派な家を建てた。
田舎の安い土地に建てたとはいえ、かなりの広さを誇る庭はT氏主催バーベキュー大会の格好の的となったわけである。
詳細は伏せるが、その後音速で離婚したH氏は自分名義の家に住み続けているわけだが、離婚したことをきっかけに、更に無料バーベキュー場としての価値が爆上がりしてしまったのだ。
炎天下の中タープを立てたり、炭を準備したり、氷と飲み物を入れる大きなペール缶を準備したりと動き回る若い衆の様子をT氏は満足気に見ている。
T氏がこれほど偉そうにしているのは年齢と立場だけではなく、費用の大半を出しているからである。
8割〜9割は彼が出資している為、余計に彼の心理は「何をしても何を言ってもいい」という馬鹿げた方向に向いてしまうのだ。
色々と面倒くさい指示を聞く若い衆は、苦笑いを浮かべている。
しかし、そこは大人な若い衆である。
そして働き盛りの若い衆である。
さくさくと会場をH氏の庭に作り上げてしまった。
「よし、んじゃ始めっゾ。」
午前11時を少し回った時点でT氏の号令が発せられた。
遂に休日返上でT氏の神輿を担ぐバーベキュー大会@H氏宅が開始されたのである。
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