過去の囁き

3/10
前へ
/40ページ
次へ
「寄るな。暑苦しい」 夏って事も有って、俺は山村を引き剥がした。 「うわー?!」 「何やってるんですか?千夜くん!山村先輩も調査員の1人、きちんと協力して下さい」 協力するのは100歩譲るとして、何で腕組んだり挙げ句の果てには、寄り掛かられて歩かなきゃならねーんだ? 鈴木も山村にはあめーからな。 と、反対隣を歩いている香澄が言う。 「千夜くん、私も腕組んでも良い?」 「ああ、良いぜ」 「酷い!保!差別だ!…あ」 斜め下から山村が抗議の声を上げる。 だが、俺は気付かなかった。 香澄が山村のことを睨んだ事を。 それにビビった山村が黙る。 俺は理由は分からなかったが、五月蝿いのが静かになったと思って、せいせいと歩いていた。 「山村先輩?僕で良ければ腕組みましょうか?」 「うん!鈴木くん、ありがとー」 結局、2、2で落ち着いたらしい。 旧校舎は、正門から少し離れた所に建っている。 滅多に人が近付かねーから、旧校舎に面した壁は一部が崩れて中に入れるようになっていた。 「不用心ですね。明日になったら、用務員さんに言いにいきましょう」 鈴木が冷静かつ呑気な事を言う中、俺は先頭を切って敷地内に入った。 「僕もー♡」 香澄が躊躇っているのを良い事に、山村も何故か喜びいさんで入ってくる。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加