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「今度は、出入り口、きちんと在るよね?!」
山村が先頭を切る事も無くなり、俺達は自然と足早に下駄箱に向かって歩く。
もう温度が冷える事も、影が現れることも、鏡が出現することもなかった。
先輩に言ったことは、嘘じゃねー。
先輩は、どうとったか知らねーが、あんなことされて忘れられる方がどうかしてる。
香澄が何か訊いてくるかと思ったが、彼女は何もつっこまなかった。
心優しい香澄らしい思いやりと言えた。
鈴木が今回の件をどう新聞部長に報告するかは分からなかったが、奴の事だ。
その辺は上手く言うだろう。
そして、俺達が下駄箱まで来た時、そこには確かに出入り口が存在していた。
「良かったあー!早く皆で外に出よう?」
「僕も辿り着くまで不安でしたが、安心出来そうです」
「私も生きた心地がしなかったわ」
「じゃあ、帰ろうぜ」
俺達は、こうして無事に旧校舎から脱出した。
夜も更けていたが、中にいるより、ずっと安心出来る。
俺は、その時、スニーカーの靴紐が解けているのを見つけた。
「千夜くん?」
山村と鈴木が壊れた壁から外に出たところで、香澄が心配そうに立ち止まる。
「悪い。靴紐を結んでいくから、先に2人と行っててくれ」
「わかったわ。もうこの旧校舎には入らないようにしましょう?」
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