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俺の名前が響くって一体どういう事だ?
まるで、見当がつかねー。
そう思いながら歩いている時だった。
廊下の床を月明かりの角度で、後ろから影が動いたのが見えた。
「誰だ?!」
俺の誰何の声が廊下中に響き渡る。
「えっ?!」
「うわっ?!ビックリしたー」
「何事ですか?千夜くん」
3人共、俺の声に驚き、怪訝そうに俺を見た。
「いや、今、ここに影が見えたんだよ」
俺の釈明に、香澄は俺にしがみつき、鈴木は注意深く、山村は興味津々で辺りを見渡す。
だが…。
「誰もいないよう?」
「千夜くん、見間違いをしたという事は考えられませんか?」
「そんな筈…」
ねー、と言おうと思った時は、影は跡形も無く、消えていた。
まるで、始めから影なんざ現れなかったかのように。
只、確かに一瞬ではあったが、影が見えたんだけどな…。
だが、気付いたのが、俺だけというのもおかしな話だ。
それに夜の旧校舎に、そうそう他に人はいねーだろう。
俺は幻でも見たんだろうか…?
俺は自分だけが気付いた事実に不安を覚えずにはいられなかった。
理科室の前を通った時だった。
何か急に寒くなってきたな。
まだ夏だってーのに、まるで真冬かと思う風が俺の背中を不気味に撫でた。
「寒い!」
「ここ冷んやりし過ぎだよう!」
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