0人が本棚に入れています
本棚に追加
仮入部は、本入部している先輩より早く帰らないといけなかった。私たちは、部長を名乗る二年の先輩に校門のところまで送ってもらった。
同じクラスと言っても一緒に駅まで歩いて行くのは、少し気まずかった。いや、同じクラスだからこそ、気まずかった。何も会話がないと余計に気まずくて、声をかけた。
「どうだった。楽しかった」
「うん」
「そっか」
いつもだったら、適当なことが言えるのに、なんだか言えなかった。黙っていると話しかけられた。
「あの、先輩たちにしてた話って本当のこと。名前も知らなかったよね」
「あれか。どうなのかな。わからないな。なんか急にね。頭の中に語りかけられたことを声に出しただけなんだよね。思わず、出っちゃったみたいな」
「そうなんだ。なんか羨ましいな。私、全然、話せないから」
「話すのって簡単なんだよ。思ったことを口に出せばいいだけだから。でも、わかる。話すのって大変なんだよね。言葉ってなんでもできるからね。使い方が大事だし」
「あんなに、身の上話できるなんてすごいな」
「まあ、ほとんど、作り話だし」
「え、そうなの。すごいね。話つくるの上手だね」
「どうなんだろう。でも、やっぱり嘘はよくないよね」
「たしかにね。でも、私もついちゃったから」
「そっか。そうだね。じゃあ、私たち、嘘つき同盟だね」
「いいね。私たち、友達ってことでいいのかな」
「いいんじゃない」
あれから、私たちは、連絡先を交換した。私は、そのことが嬉しかった。
最初のコメントを投稿しよう!