久しぶりの本音

5/6
前へ
/12ページ
次へ
 仮入部(かりにゅうぶ)は、本入部(ほんにゅぶ)している先輩(せんぱい)より(はや)(かえ)らないといけなかった。(わたし)たちは、部長(ぶちょう)名乗(なの)二年(にねん)先輩(せんぱい)校門(こうもん)のところまで(おく)ってもらった。  (おな)じクラスと()っても一緒(いっしょ)(えき)まで(ある)いて()くのは、(すこ)()まずかった。いや、(おな)じクラスだからこそ、()まずかった。(なん)会話(かいわ)がないと余計(よけい)()まずくて、(こえ)をかけた。  「どうだった。楽しかった」  「うん」  「そっか」  いつもだったら、適当(てきとう)なことが()えるのに、なんだか()えなかった。(だま)っていると話しかけられた。  「あの、先輩たちにしてた話って本当のこと。名前も知らなかったよね」  「あれか。どうなのかな。わからないな。なんか急にね。頭の中に語りかけられたことを声に出しただけなんだよね。思わず、出っちゃったみたいな」  「そうなんだ。なんか羨ましいな。私、全然、話せないから」  「話すのって簡単なんだよ。思ったことを口に出せばいいだけだから。でも、わかる。(はな)すのって大変(たいへん)なんだよね。言葉(ことば)ってなんでもできるからね。使(つか)(かた)大事(だいじ)だし」  「あんなに、身の上話できるなんてすごいな」  「まあ、ほとんど、(つく)(ばなし)だし」  「え、そうなの。すごいね。話つくるの上手だね」  「どうなんだろう。でも、やっぱり嘘はよくないよね」  「たしかにね。でも、私もついちゃったから」  「そっか。そうだね。じゃあ、私たち、嘘つき同盟だね」  「いいね。私たち、友達ってことでいいのかな」  「いいんじゃない」  あれから、(わたし)たちは、連絡先(れんらくさき)交換(こうかん)した。私は、そのことが嬉しかった。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加