0人が本棚に入れています
本棚に追加
話したくない秘密
あの日から、仮入部期間が終わるまで毎日通った。
今日は、本入部として、最初の日で、顔合わせと自己紹介をすることになっている。
私は、自己紹介というものが苦手だった。何となく、話すことは出来るし、別に恥ずかしいわけじゃない。恥ずかしくて言えないわけじゃない。それは、嘘がバレるのではないかということがこわくてたまらない。心臓が痛いと感じるほど、速く強く動く。だから、この時間が苦手だった。
自己紹介をしているときや終わった後で、「意外」、「イメージと違う」、「ギャップがすごい」と声をかけられることがある。その言葉は、言い方とか諸々のことを考えるといい意味で言っている。そうだと思っていても、それを喜べなかった。期待に背いてしまったんじゃないかと不安な気持ちが押し寄せてくる。私は、嘘つきだと言われている感覚になる。
だから、自己紹介が苦手なんだ。自分の話をするのが恥ずかしいとかそういうんじゃない。どうせ、嘘なんだし何を言うのも恥ずかしくない。他人の視線が怖いわけでもない。
私は、クラスの自己紹介でも、嘘しかついていない。
それでも、戸籍に書かれていることを詐称する気もないし、そもそもしていない。
ただ、趣味とか好きな物とかは、本当のことを明かしたことなんてない。いや、小さい頃は話していたかもしれない。こういうのは、本当か嘘か他人が判断することはできない。だから、いくらでも嘘を重ねることができる。
今日、行かないで帰っちゃうのはどうなんだろう。やっぱり怒られちゃうかな。
最初のコメントを投稿しよう!