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「君も、とは……」
「俺も少し前にこっちに戻ってきたんだ。君よりは早かったみたいだな。死んだのはほとんど一緒だったんだが」
死んだのがほとんど一緒?ラヴィナは彼の言っている意味がよく理解できなかった。
「まさか、山で馬に蹴られて死んだのですか?」
「御名答」
「いや、でもあそこには私以外誰もいなかったはずです」
「あの後、すぐに駆けつけたからな」
さっぱり意味がわからない。
「どういうことですか」
「……呪いだよ。あの山で呪いを検知して、駆けつけたら君が倒れていた。死に戻る前に会ったのはそれが初めてだよな?それで君に気を取られている間に、馬に蹴られて死んだんだ」
今度はラヴィナの開いた口が塞がらなくなる。
「私のせいでシュカリオン様は死んだのですね?」
「それは半分正しいが、半分間違っている。確かに気を取られている間に襲われたが、君に気を取らていなくてもあの馬は襲ってきたと思う。完全に呪われていたからな」
死に戻る前に、私を殺したいほど憎んでいた人物がいたのだと思うとぞっとした。実際こうして死んでしまったのだから。
「俺は死に戻ってからも研究室にこもっているだけだし、特に代わり映えはしないが、お前は何か変わったことはなかったか?」
「変わったことだらけでした」
「例えば?」
「例えば……」
例えばファービルとはもう婚約していなくて、しかもミレイユと結婚していて……そのことを伝えようとするが、目頭が熱くなって生温かい液体が溢れて出てきた。この前泣いたばかりなのに。
「……泣くほどの変化があったのだな?」
「はい」
「つまり、それが呪いの犯人につながるんじゃないのか」
そう考えたら、ファービルと結婚したミレイユか、ミレイユとファービルに結婚してほしいと考える大人の貴族たち。
そのことをたどたどしい口調で説明する。
「ミレイユか……その関係者で間違いないだろうな。そいつらを恨んでるか?一緒に犯人探しをしようか」
「いえ、犯人は探しません。だってもう二人は結婚しているんですよ。恨まれることもないですよね?犯人の要望どおりになっているわけですから」
「うむ、確かに」
単にミレイユを疑うのもイヤだった。ミレイユもファービルも大切な幼なじみだ。
「それともまだ私に呪いが残っているのでしょうか。誰かに呪われていますか?」
「いや、それはない。もう全く検知されなくなったんだ。高熱の初日くらいだったな。そう考えると、死に戻る前の呪いが残っていたのかもしれない。それでこちらに来たときに浄化された、みたいな?まだまだ研究段階でわからないけどな」
ラヴィナは心なしか安堵した。死に戻ってまで呪われたくはない。もうファービルと結婚はできないが、誰にも恨まれていないならまだマシだった。
死に戻りは一人だけではない。シュカリオンもそうだし、もしかしたら知らないだけでこの世の中に溢れているのかもしれない。
「そもそも、なぜ呪いの研究を?」
「フェリオット直々に依頼があってね」
「フェリオット……ってもしや第一王子のフェリオット様のことでしょうか」
「そう。俺らも幼なじみだから」
王子を呼び捨てにできることに驚きを隠せない。
「王族っていうのは、呪いがつきものなんだ。しょっちゅう呪われるから頼む!って言われてさ。魔力をもってるやつなんてもうほとんど存在しないはずなのに、こうやって王家への呪いばかりは残っている。それどころか今回はお前にまで使われたんだ。取り締まった方がいいのかもしれないな」
シュカリオンは真剣な眼差しで宙を見つめた。
「呪われない方法とか、呪い返しとか、そういうの全部含めて研究してるんだけど、死に戻りの研究もしないといけなくなったな。二人も研究対象がいるなんて最高じゃないか」
にやっとするシュカリオンを見て、ラヴィナもつられて笑ってしまう。
「確かに、その研究はおもしろそうですね」
「だろ?自分が死に戻るとは思ってもみなかったけど、研究者冥利に尽きるね。さらに……この研究にはもう一つ大きな利点があるんだ」
シュカリオンはわざとらしくもったいぶった言い方をした。
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