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私は魔力が無いけれど様々な妖精や精霊と契約しているので、何かを頼むときは彼らを召喚する。都合が付けば召喚に応じて、交渉次第で力を貸してくれるので魔力なしの私としてはとても有難い。あの温室で集めた素材や調味料などの殆どが、彼らとの交渉や手伝ってくれたから手に入ったようなものだ。
左の手の甲に三日月と鍵それを包み込む円状のヒイラギの紋章が浮かび上がった。いつ見ても淡い光りが美しい。
「繋げ、繋げ、繋げ。契約の結びに従い、祝福と祈りを糧に、その姿をここに──召喚」
白亜の光と共に姿を見せたのは、三等身サイズの小人だ。
赤帽子のコームは赤いトンガリ帽子を被り、見た目はゴブリンに近く木こりのような恰好で、自分の背丈と同じくらいの大鎌を手にしている。前髪が長いが結構可愛い。
「きゅうううう!」
ぞわぞわっと砂海豹様の毛が逆立つので「大丈夫ですよ」と優しく抱っこしてお腹を撫でてあげた。そうするとほんの少し頬を赤らめつつも、落ち着いてくれたようだ。ビックリさせちゃったわ。あとで高級ブラシを使って毛繕いしてあげましょう。
『ググ。今日は何を切り刻む?』
「今日は大物の砂食い鯨なの。結構大きめだけれどいける?」
『グ。問題ない。血、たくさん浴びれる。楽しみ』
そういって嬉しそうに駆けていった。速い。
次に召喚に応じたのは狼妖精のソウ、コバ、ルトの三人である。二足歩行の狼は鉈包丁と篭を手にしていた。モフモフで可愛い。
砂海豹様は警戒するも、私の腕の中にいることで安心したのか、さきほどのように暴れることはなかった。よかったわ。
『解体ならお任せ!』
『同意』
『味見してもイイ?』
「ソウ。コバ、ルト、今日は大物よ。味見は毒と血抜きしてからね」
私は肩に止まった吸血蝙蝠のベリーにも、同じように説明をして頼んだ。さて仕留めるまでに下準備をしてしまいましょう。
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