第5話 砂食い鯨のソテーとオニオンスープを作りましょう・後編

2/3
前へ
/143ページ
次へ
「きゅうううう」 「良い匂いでしょう」 「きゅう」  肉の焼ける匂いに反応して、砂海豹様は興味深そうに私の調理を見ていた。目をキラキラさせて可愛いわ。  蒸かした春露ジャガイモを見ていたら、このまま皮だけ剥いてソテーの付け合わせに変更。潰すのって手間がかかるものね。それにソテーもできたし、スープは明日ぐらいになったほうが美味しいけれど……。うん、こっちも肉汁がたくさんの野菜と合わさって、良い感じに美味しい。 「砂食い鯨のソテーとオニオンスープです」 「きゅう!」  白いお皿に盛り付けられた砂食い鯨ソテーは、表面が良い感じに焼けている。星空バジルと付け合わせで蒸かした春露ジャガイモ、さっき収穫したばかりのプチトマトを添えておいた。水露タマネギをベースにした具だくさんのスープ。どれも自信作だ。  テーブルと椅子も用意して、私と砂海豹様とシシン、ディーネ、ノーム、アドリア、コームの分も用意している。  砂海豹様はひっくり返らないように、シシンの風魔法で空気椅子を作って貰った。ソウたち狼妖精(コボルド)は新鮮な肉をそのまま自分たちの集落に持ち帰るので、食事は不参加だ。  さて、どんな味かしら。  ナイフとフォークでソテーに切り込みを入れると、思ったよりも柔らかい。肉汁がじゅわっとでる。本当は下味として塩胡椒をモミモミして少し馴染ませたかったけれど……。  一口食べてみたら、良質な肉と油が溶けるように口の中に広がっていく。  あ、美味しいぃ。塩胡椒と香辛料だけでも、えぐみは無いし、うまみ成分がたまらないわ。 「きゅうううううう!!」 「ん? あ」  あまりの美味しさに夢中で食べていたら、砂海豹様が涙目で訴えてきた。特別な椅子なのでずれ落ちることはないけれど、やっぱりあの前脚じゃ上手く食べられないわよね。一応、一口サイズに切ったけれど……。
/143ページ

最初のコメントを投稿しよう!

525人が本棚に入れています
本棚に追加