508人が本棚に入れています
本棚に追加
「今後のことだけれど、世界樹や田畑も作ったし、ここを拠点にしようと思うのだけれど、みんなの意見は?」
「きゅ──」
『家を建てるのなら、あの鯨の大きな骨を使うのはどう? 矮人妖精なら器用だし、頼んでみたら?』
「あ、そっか。ティーさんとラテさんに、温室を改装するときに手伝って貰ったわね。蒸留酒はあまりないけれど、醸造酒なら葡萄畑を作れば簡単に作れるし……。あとは少し時間が掛かるけれど、後追いで混成酒を渡すとかで交渉しましょう」
『設計はノームに任せれば? ね、ノーム』
『……』
ノームは何度か頷いた後、ジェラートのお代わりを要求された。コームは木材を切ることなら手伝うと言ってくれて、なんとも頼もしいわ。
夢が広がる。ちょっと違うけれど、私のやりたかった自給自足の生活に近づいているはず!
「あ、そうだわ。砂海豹様のお名前! シシンは知っている?」
「きゅ!」
『え、あーうん。知っているけれど……』
「きゅいい! きゅううう」
『えー、自分で言いなよ。あ、言っても分かって貰えないか』
「きゅうううう!!」
シシンと言い争っているけれど、傍から見ていると微笑ましい。
『色狂いでいいんじゃない?』
『クズ』
『放蕩者』
「きゅううううう!」
精霊たち特有の言語なので、なんて言っているか分からないけれど、仲良しそうね。砂海豹様は後脚で感情的になっていたが、ふと思前脚を使って文字を書き出した。さすが神獣種、字が書けるなんて……!
ええっと……。
砂漠の砂は柔らかく書かれた文字も読みにくい。かろうじて『リア』と書かれているのが見える。
「砂海豹様、すみません『リア』しか読めないです」
「きゅ! きゅうう……」
へなへなに落ち込む砂海豹様の背中を、そっと撫でる。
「リア様とお呼びするのは、ダメですか?」
「……っ、きゅう」
『いいって』
「まあ! ありがとうございます! リア様」
「きゅう」
リア様に抱きついたら、ジタバタしたが最終的には大人しく抱き返してくれた。
こうして私の怒濤の一日が、終わりを告げる。
砂食い鯨の残った肉はハンバーグと、塩漬けにして一週間寝かせてからベーコンにしましょう。
砂海豹様、リア様の呪いが解けるまで、あるいはある程度元気になるまでは──だけれど。アドリアが世界樹を出現させてくれたから、魔物に襲われることはないだろうし。
モフモフを洗ってあげて一緒に添い寝しよう。美味しい物にモフモフ神獣様を合意的に触れられる! なんて最高なのかしら。これはもう運命ね!
最初のコメントを投稿しよう!