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第8話 放蕩王、ガリアスの視点1
これは、運命なのだろうか。
民の望みをできるだけ叶えようと思った。
飢えないよう、死の恐怖、生活の不安を取り除くため、黄金を出し続ける魔法術式と不老不死の体を民に与え、法と秩序で管理する国を作り上げた。
神々に「人としての範疇を超えた国だ」と怒り狂った時すら、魔法術式と言葉でそれらを跳ね除けたし、無理難題も難なく応えたことで、我が国民は『不死族』という種族名を得た。
これで「私と同じ神と人に近しい存在となった」と喜んだのだが──私を理解してくれる者は現れなかった。
いや、もしかしたらいたのかもしれない。でも私にはわからなかったのだ。
王として最善を尽くしたものの、私を滅ぼしたのは愛情という理解できない不確かなものだった。心動かされた者を傍に置き、言葉をかけてみたが、上手くいかず傍から離れていく。
「貴方には誰かを愛する心なんて、ないのかもね」と、かつて妻だった女性は皮肉めいたことを言った後、命を絶った。
心が動いたから傍に置いた恋人は「貴方様の心は極寒の中で、溶けることなんて、ないんだわ!」と言って去った。
「あなたは嫉妬すらしてくれないのね」と絶世の美女は、告白する前に攫われていった。
一抹の寂しさはあるけれど、それだけ。
満たされない。
どうすれば、この穴は埋まるのだろう。
愛するとは、どういうことなのだろう?
一人ではなく、いくつもの女性を囲めば、この穴は埋まるだろうか?
一年の暦を決める魔女のお茶会で、十二の魔女たちそれぞれに愛を囁いた結果──呪いをかけられ、王国も封じられた。
何がいけなかったのだろう?
美しい者を美しいと言って、何が悪かったのか。
傍に置きたいと望むのは、いけないことなのか?
数百年、美しかった黄金の王国は死の砂漠となって、今も封じられている。私もただ歩き続けていた。
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