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そう矢継ぎ早に話したのだが、なぜか古き友は頭を抱えていた。今の説明にどこに考え込む要素があったのだろう。それとも私が呪いにかかっていたことを今知ったとか?
いやそれはないな。彼は風そのもの、どこにいようとあらゆる情報がすぐに手に入る。
「それにしても些か薄情じゃないかい? 私が呪いで苦しんでいるというのに、放っておくとは」
「それは自業自得だろう。半神半人である概念を壊して自国民を不老不死にしたり、黄金を永遠に生み出す魔法術式を編み出したり……。これだけでも他の神々はガチギレだったけれど、その辺の回避は見事だったし、見ていて面白かったよ。でもさ、恋愛関係だけは、しくったね」
「私なりに善処したが……」
「好いていたら『空中都市と妻を交換しろ』なんて条件は、飲まないからな。他の種族に妻候補を奪われた時も、病弱で痩せ細って死にかけていた妻にも、君は心を大きく揺さぶられなかったし、取り乱すこともなかった」
さすが情報通。よく知っている。
過去を思いつつ、当時の気持ちを振り返った。
「空中都市は珍しかったし興味があって、つい。略奪婚は立派な伝統だし、他種族との軋轢を生むよりは合理的だ。それに彼女も満更じゃなかった。……病気は不老不死の研究を始めたキッカケだったけれど、彼女は不老不死を受け入れずに死んでしまった」
「そんなんだから十二の魔女に呪われるんだよ。呪いが掛け合わさって……昼間はあんな姿なのに自分で認識できないってのが、あの魔女たちらしい報復だね」
「魔女たちは素晴らしい能力を持っていたから、傍に置きたいと心が動いた。プロポーズや贈り物もしっかりしたのに……呪うなんて……」
「そりゃあ、十二の魔女全員同時にアプローチすればそうなるだろう!」
「?」
全員気になったのだ、しょうがないだろう。私の心が揺さぶられることは滅多にないのだから、心が少しでも動いたら距離を縮めて傍に置きたい。
そうだ。
あの子は、今までと違う。
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