第3話 死の砂漠で祝福の塩檸檬水を作りましょう♪

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 ゆっくりとスープ用の皿を傾けるとちびちびと飲む。なんとも可愛らしい。気のせいか前脚の黒い痣が少し薄くなったような?  そんな早く効果が現れるはずもないわ。……さて、とりあえず今日の寝る場所と夕飯のことを考えなきゃ駄目ね。  寝泊まりセット一式があったから、問題は食料──。  グォオオオオオオオオン!  なんてタイミングがいいのかしら。食材が自ら現れるなんて。 「あの雄叫びって」 『うん、砂食い鯨だね』 「まあ! 砂食い鯨!」 「きゅうう! きゅうう!」 「あ。こっちに向かってくるわね」 『獲物だと思われたんだろうねぇ』 「きゅうう!」 「砂海豹様、あまりジタバタしては駄目ですよ」 「きゅう……」  オオオオオオオオオオオオン!  98フィート前方に白亜の砂漠を悠々と泳ぐ巨体を視界に捕らえた。真っ黒な巨体は間違いなく魔物種の砂喰い鯨!  実物は図鑑でしか見たことがないけれど、思った以上に大きい!  26フィートはあるかしら。馬車よりも大きいとは聞いていたけれど予想以上だわ。砂飛沫を上げながら突き進む迫力、力強さと肌がひりつく雄叫び。温室にいたら体験できなかった──そう思うと胸が躍った。  魔物種の中でも頑丈だった紅蓮竜(レッド・ドラゴン)に比べれば、外皮はさほど固くはなさそう。咆吼や威嚇は肌にピリピリくるけれど、この程度なら大丈夫だわ。  毎年、魔物種が活発になると冒険者組合からの助っ人を頼まれていたのが懐かしい。私に戦う力はないけれど、その当たりは適材適所で倒せる契約者を呼べば良いのだ。 「あれを倒すとなると……」 「きゅい!?」 「んー、赤帽子(レッドキャップ)のコームと、肉の解体処理に狼妖精(コボルド)のソウたちがいれば何とかなるかしら」 『順応が早いなぁ。さすがユティア。大丈夫だと思うよ。血抜きは吸血蝙蝠(ブラッド・バット)に頼むんだろう?』 「もちろん。ベリーは血抜きがとっても上手だし、早いもの」
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