玄関にて

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あー、ほんとムカつく、あの監督。 甲子園出場経験のある高校からきたとか、えらそうにさ。 俺らで甲子園いけるわけねーじゃん、それなのに練習キツイ。 部活もうやめようかなあ、でもN高校と試合はしてみたいんだよな。 去年に負けて悔しかったから。 そうはいっても監督は嫌だな、やれやれ......。 頭ん中で愚痴を吐きながら合鍵で玄関のドアを開ける。 「ただいまーっ!」 うちは専業主婦だから、部活を終えた頃に夕飯ができてて匂いがする。 それなのに、今日は匂いが無い。 「ただいまー、母さん?」 「おかえりーっ洋二(ようじ)ラーメン食べに行って」 「はあ?」 廊下の向こうから母の声が聞こえてきた。 「お母さん、今夜は夕飯をつくれないの、ラーメン食べに行って」 「なに?具合い悪いの?」 「来ないで!今日はラーメン食べて!」 「なに言ってんだよ、もうっ!」 俺は通学鞄とスポーツバッグを玄関に放り投げた。 「どいつもこいつも、イラつかせやがって!」 俺はスマホと財布だけ持って、玄関のドアを閉めた。
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