玄関にて

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「なんだよ、ラーメン、ラーメンって」 家の近くの店に入り、醤油ラーメンの食券を買ってカウンターに着く。 ほどなくしてラーメンのどんぶりを受け取った。 部活で疲れて帰ってきて、母さんの夕飯を食うのが救いだったのに。 なにがラーメン食べに行けだよ、まったく。 なんだ?浮気でもしてたのか?男を連れ込んでたとか? いや、それはないか、うちは仲良し夫婦だ。 「あっ、写真で見た顔だ」 ふと声がした。 見上げると見知らぬ男性が俺を見ていた。 黒いキャップ帽をかぶっていて、顔がよくみえない。 「は?」 「家のリビングに飾ってある家族写真」 「そんなの、なんで知ってんすか?」 「さっきまで見てたから」 「はあ?」 「良かったな、無事で」 男は離れたカウンター席へと、どんぶりを持って座った。 意味わかんねー、なんなんだよ、今日は。 俺はラーメンを早食いして店を出た。
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