2回目

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2回目

「早く帰ってくるなら教えてよね、びっくりしたじゃんか…」 ドアは閉まっている まぁいいや、スマホをスクロールしながらリビングに歩く 「ただいま」 変な感じが全身を走った 今の声………お母さんじゃない、っていうか男の声かよ 「はーい」と返事をするも、 明らか過ぎる違和感と矛盾点が頭にだいぶ遅れてやってくる え?……「ただいま」? ハッとした時には扉が開く瞬間だった… 夜の帳の中から真っ暗なものが顔を出す やがてすぐに、男の全体像が映し出される え? 嘘… 男の左手を見る、あれは…………日本刀………??! 非日常な光景に頭が真っ白になり、目が眩む 男とともに刃が突きで最短距離で飛んでくる あ… 世界が、スローモーションになった 私は恐怖か絶望か、逃げること、叫ぶことすらしなかった 手元のスマホを握りしめ ただ自分の左胸に、 刃先が食い込んでいくのを見ていた どうしてだろう 夢でも見ているんだろうか、そんな感覚 死ぬのか…? 恵まれない人生だった…もうちょっと生きてみたかった… 私の最期は通り魔か ゆっくりと、自分の身体が仰向けに、倒れてゆく だが、今、桁違いに頭の回転が早く、周りが遅い気がする って事は、※タキサイキア現象※の状態だろうな 左胸、心臓を突かれた、多分私は死ぬ 誰なのか?何で私なのか?という無数の強い疑問を抑えて さっき感じた大きな違和感を考えることにした それが、死の恐怖からの逃避行のつもりかは、 自分でも、分からない まず、男は何で「ただいま」と言った? その後、私が返事をして何故か扉を閉めた そして、あの時スマホは落ちたはずなのに… 何で、私は今、スマホを握ってる? スマホは確実に落ちた、時が戻ったとかないよね? 半ば失笑しながら言う 返事……ただいま……… !まさか!?!? そろそろ後頭部が床に激突する頃だろう 僅かな希望、そんな事あり得ない、 でも、藁でも糸でも空気でも掴むしかない 死んでたまるか! 歯を食いしばり、 喉に全ての力をかけて叫んだ 「おかえりっ!」 ※タキサイキア現象・・・極度の危険を感じた瞬間             周りがスローモーションに見える現象
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