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「奈央ちゃん、可愛すぎ……」
ギュッと
苦しいくらいに
私のことを強く抱きしめる誠一さん。
いつ人が通って
いつ誰に見られるかわからない状況。
それなのに
今の私はそんなことすら
気にならないくらいに彼のことしか考えられないでいた。
「……今日の夜、会えますか?」
「もちろん。仕事が終わったら、会社に迎えに行くよ」
「……待ってます」
今まで無意識に
遠ざけていた次に会う約束を交わすこと。
けれど
誠一さんの
おかげで当たり前のように
次に会う約束を
自分から交わすことができたのは
まだ完全に拭えたわけではないけれど
少しずつ母の影に怯える生活から解放されつつある証だった。
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