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回想
波留とのこれまでの結婚生活が、まるでアルバムのページをめくるみたいに、脳裏に蘇ってくる。
大学を卒業して建築設計事務所に入社して、同期の波留と知り合った。俺たちは二年後には結婚した。
結婚して一年が過ぎるころ長男の冬透が、翌年には長女の夏葉が生まれた。
名前は二人で考えて名づけた。
「これで名前にハル、ナツ、アキ、フユと四季が揃ったわね」
そう言って波留はとても嬉しそうに笑った。
波留はあまり欲ばらない性格だった。
せっかく産まれてきてくれたんだから、人生楽しんで生きてくれたらいいの。自分の好きなことを見つけてくれたらもっといいけれど。波留はそう言って子どもたちに勉強を強いたりすることもなく伸び伸びと育ててくれた。
慌しく日々は過ぎていった。
冬透も夏葉も猛烈な台風並みの反抗期もあったし、学校に行きたがらずに不登校になった時もあった。その度に波留が大きな心で受けとめてくれたからなんとか二人とも無事に成長して、そして自立できたんだと思う。
何か事あるごとに波留とともに考え悩んだけど、それでも俺は仕事に没頭できた。仕事を辞めて俺を支えてくれた波留のおかげだ。
子どもたちも就職して家を出て行き、これからは夫婦二人だな。今年の秋にはあの山に雲海を見に行こう。必ず時間を作るからと俺が言うと、秋人は仕事が忙しいから期待しないで待ってる。と、波留は満更でもない顔をして言った。
これからは少しずつ波留の喜ぶことをしてあげたい。そう考えていた矢先だった。
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