希望

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希望

 もう波留が倒れてから十日になる。俺は眠り続けている波留の手をいつものように握った。 「なあ、波留。握り返してくれよ。俺の声が聞こえるだろう? 波留」  今まで二人で色んなことを乗り越えてきたじゃないか。頼むよ波留。目を覚ましてくれよ。こんなことでへこたれるお前じゃない。俺は信じてる。  波留の指が俺の手の中で微かに動いた。 「波留!」  波留が……意識を取り戻した!  俺は波留の手を両手で握りながら、波留波留波留と呼び続けた。  波留は意思の疎通ができるようになるとぐんぐん回復していった。  程なく波留はリハビリ病棟に移された。  波留は毎日毎日、懸命にリハビリに励んだ。  俺は医師から、車椅子での生活も覚悟してくださいと言われていた。  しかし波留は頑張った。  ある日病室に行くと俺の顔を見るなりVサインをしている。 「今日、一歩歩けた」 「凄いな、波留。やったな」  ひと月、ふた月と一歩ずつ、手すりをつたって歩けるようになっていき、波留は驚異的な回復をみせた。我が妻は凄い。本当に凄い。 「アキちゃん。あの山に行こうね」   それが波留のモチベーションになっているようだ。  だが、右脚は引きずったまま、思うように動かすことは無理なようだ。   
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