恋愛迷子

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すぐにベッドに着いて、オレはそこに倒れ込む。だけど思い出す。このベッドはオレたちのアレでぐちゃぐちゃだったことを。 ビジホにゴムなんて置いてあるはずもなく、オレもあいつも何もつけずにヤリまくったから、シーツは2人分の精液で汚れていたはず。なのにオレが今寝ているベッドのシーツはキレイなものだった。 予備のシーツ? それともフロントに言って替えてもらったのだろうか? 予備ならともかく、もしフロントに言ったのなら、一体どんな顔して替えてもらったのか・・・。 考えるとものすごく恥ずかしいけど、どうでもいいや。オレが顔を合わせた訳じゃないし、恥をかくのはあいつだけ。オレはとにかく、今はだるくて眠いんだ。だからオレはこのまま寝ることにした。 オレは横向きになって軽く手足を丸める。それがオレのいつもの寝方だ。その時バスルームの外に置いてあったホテルの部屋着の合せがはだけて太ももが出てしまったけど、オレはそのまま寝に入る。だけど、それをあいつが直してくれてる気配がする。まだ部屋にいたのか。オレはこのままここで寝るから、お前はさっき取ったもう一部屋の方で寝ろよ。 そんなことを考えながらオレの意識は眠りの底に落ちていく。 本当はあいつにいっぱい訊きたいし、オレも言いたいことがたくさんある。だけどもう限界とばかりに眠りにつくところだったけれど、オレの意識は瞬時に戻る。なぜならあいつがオレの寝ているベッドに入ってきたからだ。 オレの衣服を直し、布団を掛けてくれていると思いきや、あいつはそこに一緒に横になったのだ。ただでさえ狭いシングルのベッド。そこに男2人が寝るなんて無理がある。だからなのか、そいつは寝ているオレにピッタリくっつき、抱きしめる形になった。 「・・・お前何ここで寝てるんだよ。あっちの部屋行けよ」 不機嫌な上に喘ぎすぎでがらがらの声でそう言うと、あいつは逆にさらにぎゅっと抱きしめる。 「いやだ」 「は?」 何言ってんの?こいつ。 「行かない」 「行けよ」 「いやだ」 「狭いだろっ」 そう言って引っ付くそいつを離そうと押すけれど、さらに力を込めて抱き込められる。 ぎゅぎゅぅっと抱きついてくるそいつに、オレの苛立ちはさらに増す。 「いい加減離せ・・・」 「お前さ・・・」 オレの抗議とあいつの言葉が重なる。すると2人とも言葉を切って黙るけど、先に話したのはあいつだった。 「オレが好きなの?」 その突拍子もない言葉に、一瞬苛立ちを忘れる。 「だからあんなに怒って泣いたのか?」 「泣いてない」 「泣いたろ?」 「泣いてないから」 泣きそうだったけど、涙は流さなかった。だからオレは泣いてない。 「・・・まあ、それでいいけど。でさ、お前はオレが好きなの?」 オレが頑なに認めないせいか、そいつはあっさり意見を引っ込め、再び同じことを聞いてきた。 「・・・・・・・・・」 ここでも『違う』と否定したいところだけど、オレは何も答えなかった。 こいつのことが好きかどうか以前に、誰かを好きになる気持ちがオレには分からない。なのにその分からない気持ちを、そいつはサラッと言った。 「オレはお前が好きだよ」 その声があまりにも自然で優しくて、だからオレはカチッときた。 「何言ってんだよ。結婚したやつがさっ」 そうだこいつは結婚したんだ。オレがこいつの自分勝手な告白で散々悩んでいるというのに、オレのことをさっさと忘れて結婚したんだ。 つい昔の感覚でこいつのことを見てけど、こいつはとっくに結婚した既婚者じゃないか。 「嫁がいるのにオレを抱きやがって。相手が男だろうとヤったら浮気だからなっ」 そしてその片棒を担がせやがって。 考えれば考えるほど腹が立ってくる。 今まで色んな人と夜を共にしてきたけれど、オレは浮気なんて最低だと思っている人間だ。だから既婚者どころかパートナーがいる人とは絶対にしてこなかったし、それを隠して近づくやつらは蹴倒してきた。 なのに・・・なのになのにっ・・・。 「お前・・・サイテーだっ」 悔しすぎて、また涙が出てくる。 お前はなんの権利があって、オレ貶めるんだ。
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