084満開

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084満開

彼女の酔い方の違いを 見極めるのは気付いてしまえば 簡単だった 悪い酔いをする時 彼女は絶対にチェイサーを挟まない だが 本当に僕と楽しく呑む時は 呑み始めから必ずチェイサーを挟む 彼女はチェイサーに水以外にも 様々な物を使った コーラ お茶 温かいお茶やスープ だが 僕の判別に間違いはなかった でも僕は彼女には言わなかった 今でも彼女に この判別方法は秘密のままだ 知れば彼女は僕に気を遣い 僕の居る場では 常にチェイサーを 入れるようにするだろう 自分自身も気付いていない ストレスを隠して…… 以前 彼女は僕との出会いを 雪解けだと表現してくれた 日差しを浴びて咲き誇る花 日差しに気を遣って 咲く花なんてのは 見たことも聞いたこともない 雲や雪に隠れた日差しでは 花は満開にはならない でも 花はそれでも 嬉しく楽しく咲き誇る ならば 日差しはそれでも構わない 曇っているよ まだ雪があるよ と伝えても 花は気にせず満開になろうとする それなら たくさんの雲やたくさんの雪に 邪魔をされても それでも花を照らし続けよう 彼女が咲き誇れるよう 僕が照らし続けよう
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