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085日差
僕が初めて彼女についた嘘
仕事終わりで
まだ仕事モードが
完全に切り替わっていない彼女
それと普段
僕の知る通常モードの彼女
その落差に苦しみ
表現出来ないまま
彼女にも言えず
不機嫌の理由に嘘を言った
そして僕は
彼女の酔い方を
判別出来るようになった
彼女が仕事の後
僕に会い呑む時は
ほとんど間違いなく
チェイサーを入れない
つまり
この時の彼女は
仕事モード
風俗嬢であり
彼女ではなかった
それは
その現実を目の当たりにするたびに
僕の心に刺さった
まるでそれは
徐々に身体を蝕む
毒のようだった
だが僕は
本当に自分に嘘をつくのが下手だった
それでも
彼女が仕事終わりに来そうかな
と思った日は
自宅にビールやタバコを用意した
お腹が空くであろう
彼女が食べるかもしれないと
軽めの食事も用意した
時間を見計らって
お風呂も沸かした
もちろん僕の杞憂で
彼女は来ない日も多かった
それでも日差しである僕は
彼女を照らし続けた
だがある日
言われてしまった
「仕事の時にそっちに行くのを」
「辞めようと思う」
僕都合で言ってしまえば
察しがいい
感が鋭い
それだけ
彼女は僕のことを見てくれていた
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