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小林先生とガイドの成田ウメを先頭に、生徒一行は山道を歩いた。
ミサ子、トモ美、カナ絵の三人は最後尾を歩いていた。彼女らは手ぶらだった。三人の荷物の入ったリュックは全てネネが運んでいたからだ。
お腹に一つ、背中に一つ、両肩に二つのリュックを抱え、ネネは息を切らしていた。リュックにはそれぞれの弁当や水筒、レジャーシート、もしもの時の雨具まで収納されている。出発からものの十五分でネネは汗だくになった。
「落とすなよー」
「泥一つつけたらお仕置きな」
「ほら、ガンバレガンバレ。キャハッ」
三人は囃し立てながら、タバコを咥えて笑った。
身体の細いネネの体力では四人分の荷物を抱えて山登りなど出来るはずもなく、頼りない足取りは徐々に失速し、生徒の列からだいぶ遅れてしまった。
「あーあ、もうみんな見えなくなっちゃったじゃんかよ」
「お前がとろくさいからよ」
ミサ子がネネの脚を蹴った。膝をガクつかせながらもネネは転ぶわけにはいかない。リュックが汚れてしまう。
「まーいーんじゃね?」
カナ絵が大きく伸びをしながら言った。
「このままみんなと山登っても退屈だし」
「たしかに言えてるー」トモ美が手鏡片手に相槌を打った。またファンデーションを直している。
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