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天気は快晴。虹百合学園の二年生はの登山学習で成人山に来ていた。
「こちらが本日ガイドを務めてくれる、成田ウメさんです」
引率の小林先生が隣りの老婆を紹介した。腰が曲がった人の良さそうなお婆さん。成人山のガイドを四十年も続ける大ベテランらしかった。
「はいはい、皆さん、よろしくねぇ。さっそくだが、この山の名前の由来を説明しておこうかねぇ。成人山と書いてナリヒトヤマと読むんだけんど――」
「あー暑い……」
整列した生徒たちが成田ウメの話に耳を傾ける中、最後列でミサ子が呻いた。
「ホントだよ。せっかくメイクして来たのにドロドロ……。誰だよ、イケメンがガイドとか言ったやつ」
トモ美が手鏡片手にファンデーションを延々と塗りたくっていると、
「オメーが勝手に妄想してただけだろ」
と、カナ絵がツッコミを入れてケラケラと笑った。
「てかさー、なんか臭くね?」
ミサ子とトモ美がすんすんっと鼻を動かして「確かにー」と同調した。
三人の視線がネネに向けられた。
「オメーのことだよ」
ミサ子がネネの尻に蹴りを入れたなら、よろよろとつんのめったネネは前列の生徒の背中にぶつかった。
「なに!?痛いんですけど!?」
「そこっ、何を騒いでるの」
「ヤベッ、コバにバレた」
小林先生の声が飛ぶと、三人は前を向いて姿勢を正した。
ネネは何も言わずに俯いた。口答えをすれば、非道い仕打ちが待っているからだ。
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