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僕はまだ泣けない
僕は毎日、同じ時間に玄関を見るようになった。
18:00前後にアパートの階段を聞き慣れた足音で響かせる。
必ず聞こえて来ていた。今日も、
「お帰り、仕事はどうだった?」って。
いつも通り帰って来る気がして、自然と身体が振り向く。
きっとクセになっている。
僕の心の中で君は間違いなく生きている。
変わらず、恋をしている。
今、慣れない手つきで食器を洗っている僕の瞳には、何を希望に生きていけば良いのかと、涙が溜まっているのではなく、苦しさから瞳はカラカラしていた。
君との出逢い、君との生活。
「幸せにします」それは言いたくなかった。僕と君の幸せはきっと違う。だから、
「これからは2人の幸せを半分ずつ繋げて、新たな道をつくりながら歩いて生きて行きたい」そう伝えた始まりを覚えているかな。
そんなに親しい訳でもない。連絡先も知らない期間が長くて。話した覚えも多くはない。
でも君をずっと見てしまう自分がいて、
『大切にしたい』『ずっと一緒に居たい』って、強く思った。
君も、同じ気持ちでいてくれた。今も変わらず思っているよ。
だから今、写真となって僕の前で微笑んでいる君の方が、絶対に辛いはずだ。
ごめん、本当にごめんね。守れなくて…。
残される事がこんなにも悲しい。堪えられないよ。だったら、
僕の残りの時間を全て君にあげたかった。
神様は不公平だ。どうして僕じゃダメだったの?
僕は、今までどうして君の隣にいたの?
君の隣にずっと居たかった、君を守る事が、僕の生き甲斐だって思っていた。
なのに…。何も言わずに隣から急に居なくなってしまった。
お願いだから、
大切な人、返して下さい…。
どうしたら、会える? 会いたいんだよ。
もし、この願いを叶えてくれるのなら、僕も君の元に行くから。
こんな事思うなんて、違うのは分かってる。でも、どうしても好きなんだ。
僕にとって、かけがえのない存在なんだ。これからも、人生の道を一緒につくっていく人なんだ。
いずれ僕たちから離れて、その道を、繋いでいく子を授かれたらと話していた時、本当の幸せを知った気がした。2人の血を引いた存在を想像すると、心が温かくなって、君を独り占めできる時間を大事にしよう。今を大事に過ごそうって。
戻してよ…。お願い。どうかお願いです。お願いします…神様…。どうして?
沢山、与えてくれた。笑顔にさせてくれた。
こんなにも大切で、全力で守りたいと思った人に、
どうして、こんな終わり方を与えたの?
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