17人が本棚に入れています
本棚に追加
一目惚れ
「……あ、ああ、はい! よろしくお願いします!!」
春は少し考え事をしていたせいか、一歩遅れて挨拶をし、ゴーの楽屋を出て行く。
春にとって何年ぶりだろうか……一目見て恋をしてしまったのは……それが一目惚れということだろう。
春が楽屋に戻る途中の廊下でも、今のゴーの笑顔が頭から離れず、歩いている間も心ここにないようで、ぼんやりとしながら廊下を歩いていた。
いや、しかし、こんなことで今日の出演番組にまともに出られるのだろうか。今日の番組では司会のゴーとのトークがある。
もしかしたら、まともに話ができないかもしれないと思いながらも、春は時間まで自分たちに与えられた楽屋で待機しているのだ。
ZERO達に与えられた楽屋。春以外の他の二人はいつものように楽しく会話をしているが、春はその会話に入れない。いや、きっと話をしていても、やはり頭に今のゴーの笑顔しか考えられていないからだ。
しかし、考えれば考える程、頭から離そうとしても離れてくれないようで、ここに楽屋に来てから何度も頭を振ってしまっていた春。
全くもってどうしたらいいんだろうか。本当に分かってないような春だ。
だが、時間というのは何をしていても過ぎてしまうものだ。
あっという間に番組の本番だと言ってくるスタッフ。
今の春はスタッフに声を掛けられただけでも、目を丸くしてしまっていた。
だが番組に出ることには慣れているのだから、そこに特に緊張はしていない。今はそんなにテレビには出てないが、人気があった頃には各局から引っ張りダコ状態だったのだから、番組に出ることに関して春は緊張していないようだが、やはり先程一目惚れしたゴーがいるからであろう。
もう自分には青春という時代は終わったかと思っていたのだが、どうやらまた再び青春というのが来てしまったみたいだ。いや、青春というのは何歳になっても来る。その度に人間っていうのは胸を高鳴らせてしまうのだから。
番組内でMCであるゴーにZEROのメンバーが紹介され、舞台へと上がるのだ。
最初のコメントを投稿しよう!