一目惚れ

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一目惚れ

「……あ、ああ、はい! よろしくお願いします!!」  春は少し考え事をしていたせいか、一歩遅れて挨拶をし、ゴーの楽屋を出て行く。  春にとって何年ぶりだろうか……一目見て恋をしてしまったのは……それが一目惚れということだろう。  春が楽屋に戻る途中の廊下でも、今のゴーの笑顔が頭から離れず、歩いている間も心ここにないようで、ぼんやりとしながら廊下を歩いていた。  いや、しかし、こんなことで今日の出演番組にまともに出られるのだろうか。今日の番組では司会のゴーとのトークがある。  もしかしたら、まともに話ができないかもしれないと思いながらも、春は時間まで自分たちに与えられた楽屋で待機しているのだ。  ZERO達に与えられた楽屋。春以外の他の二人はいつものように楽しく会話をしているが、春はその会話に入れない。いや、きっと話をしていても、やはり頭に今のゴーの笑顔しか考えられていないからだ。  しかし、考えれば考える程、頭から離そうとしても離れてくれないようで、ここに楽屋に来てから何度も頭を振ってしまっていた春。  全くもってどうしたらいいんだろうか。本当に分かってないような春だ。  だが、時間というのは何をしていても過ぎてしまうものだ。  あっという間に番組の本番だと言ってくるスタッフ。  今の春はスタッフに声を掛けられただけでも、目を丸くしてしまっていた。  だが番組に出ることには慣れているのだから、そこに特に緊張はしていない。今はそんなにテレビには出てないが、人気があった頃には各局から引っ張りダコ状態だったのだから、番組に出ることに関して春は緊張していないようだが、やはり先程一目惚れしたゴーがいるからであろう。  もう自分には青春という時代は終わったかと思っていたのだが、どうやらまた再び青春というのが来てしまったみたいだ。いや、青春というのは何歳になっても来る。その度に人間っていうのは胸を高鳴らせてしまうのだから。  番組内でMCであるゴーにZEROのメンバーが紹介され、舞台へと上がるのだ。
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