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ドキドキのメル友
春は意識してしまうのか、普通の話しかできなかった。さすがに春がゴーに想いを寄せているような文面は書けない。
『明日も仕事です。僕たちは暇があまりないんですよねー。 だから、大変でして……』
そりゃ、そうだろう。売れっ子なのだから。
『そうですか……では、明日も頑張ってくださいね。それでは時間も時間ですし、おやすみなさい』
そう春はメールを返すと、椅子から立ち上がりシャワールームへと向かう。
春がシャワーから戻ってくると、再び携帯が点滅しているのが目に入ってくる。
『では、おやすみなさい。今度、春さんのような素敵な声が出るようにレッスンしていただけると嬉しいです』
本日最後のメールにはそう書いてあった。
「レッスンかぁー……こんな僕でいいのかな? 僕だってまだ未熟者だし……まぁ、いいチャンスといえばチャンスなんだろうけどな」
春は夜遅いこともあってか、メールはそのまま返信せずにテーブルの上で充電させてからベッドに横になる。
翌日、目覚まし時計で目が覚める春。昨日、携帯を置いておいたテーブルに向かう。携帯を開き、朝コーヒーを飲むためにガスコンロの上にヤカンを置く。そして湯が沸くまで昨日のメールを返信しようとするのだが、手が止まってしまったようだ。
返信するために覗いたゴーからのメールの文章。
『レッスンしていただけないでしょうか?』
このメール、まさか……とは思ってしまう。そう、春のことを誘っているようにも読めてしまうのだから。だから今の春というのはいいように取るとそう考えてしまう。
昨日、確か……春のメンバーがいたのにもかかわらず、ゴーは春にだけメルアドを聞いてこなかった。そのことを不思議に思う春。
「……ってことは……僕もゴーのことが気になっていて、ゴーも僕のことが……気になっているってことなのかな?」
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