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せっかく仕事がお休みなのに、家でゴロゴロすることもできなくなった。もらった一万円を財布に突っ込み、外へ出る。
お母さんは、これでお見合い写真を撮ってこいと言った。
だけど私は、結婚相談所に足を踏み入れる気も、婚活サイトに登録する気もさらさらない。
お母さんの口ぶりからすると、すでにお見合い相手に目星がついているようだった。
お相手の家族に私の写真を渡して、うち娘はいかがですかぁ、家事全般は苦手ですけど飲み友くらいにはなりますよ、なんて営業をかけるのだろうか。
釣書と一緒に。
まったく、この年まで彼氏がどうのなんて言わず放置してきたくせに、今更どうしたんだろう。
私が一万円を突き返して言葉を尽くしたとして、あのお母さんが素直に引いてくれるだろうか? いや、引くまい。
ひとまず言うとおりにして、お相手とはご縁がありませんでした、というシナリオのほうが理解を得られそうだ。
私は方向転換して、行き先を商店街へ決めた。
確か、商店街の並びに写真館があったはずだ。
大人になってからは、駅と逆方面とあって足が遠のいていた。
だけど、昔は毎日のように通った道だ。
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