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スーツベスト姿の、若い男性だった。
白い肌、切れ長の目、すっきりとした輪郭。
銀縁メガネをかけた男性は、「いらっしゃいませ」という割に少しも笑わない。
失礼な話だけど、まるでアンドロイドみたいだと思った。
「どうかされましたか」
感情のこもらない声に、私ははっとした。
「あの、ここって藤写真館ですよね。私、小さい頃にお世話になって……。そのときは、おじいさんがひとりで経営されてたと思うんですけど」
ああ、と男は頷いた。
「初代オーナーは亡くなりました。今は、私が彼のあとを継いでいます」
「そう、ですか。それはご愁傷様です。まだいらっしゃるかなと思って来たんですけど……残念です。あの、スタジオの雰囲気、ずいぶん変わりましたね?」
特に外観と内観のギャップがすごい。
「ああ。内側の設備を整えたら、予算が尽きてしまいましてね。外観にまで手がまわらなかったのです」
「え」
そんなことがあるだろうか。
だからこんなにチグハグだってこと?
であればいっそ「まだ改装中なのです」って言って欲しかった。
オーナーの男性は私を応接間へ促すと、流れるような所作でタブレットを掲げた。
タブレットの画面には、撮影プランが映し出されていて、「オススメ!」の文字が踊っている。
「本日はどのような写真をお求めですか」
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