12人が本棚に入れています
本棚に追加
「ではこちらにご入力ください」
タッチペンを渡されたので、名前と住所を書き込む。
「撮影前に、簡単なアンケートもお願いします」
面倒な。心の中でぼやきながら、私はしばらく液晶画面と向き合うことになった。
アンケートは自分の性格や趣味、思い出の場所や好きなシチュエーションなどを問われる問題だった。
ほとんどがYES・NOで答えられるような簡単な質問だったが、想定外に数が多かった。
この情報をVRに反映させるのだろうから、細かく問われるのは仕方ないことだけど。
「服装はそのままでよろしいですか」
オーナーから尋ねられ、初めて気が付いた。
今の私の服装は、カジュアル寄りのワンピース。
本当ならもっと着飾るべきなんだろうけど、かしこまった格好をするほど気合いを入れてない。
それに私の場合、清楚系スカートなど身につけようものなら、絶対にぎこちない表情になる。
「このままでいいです」
「では、次世代型Photoプラン(VR)での撮影をはじめます。そちらのドアを開けて、撮影スタジオへお入りください。お部屋には椅子が置いてありますので、お掛けになってお待ちください。AIのご案内とともに、仮想現実がスタートします。ああそれと」
透明なヘッドセットを渡された。
「椅子にお掛けいただきましたら、こちらの専用ゴーグルを装着してください。撮影中はこれを外さないように。出来上がった写真には、ゴーグルが写らないよう特殊な加工を施しますのでご安心を」
以前、VR体験をしたことがあるけど、そのとき身につけたものに比べると、透明ゴーグルは遥かに軽量だった。
何だか、アトラクションに乗る前みたいでドキドキしてしまう。
私は、案内されるままに撮影スタジオの扉を開けた。
最初のコメントを投稿しよう!