藤写真館へようこそ

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「ではこちらにご入力ください」 タッチペンを渡されたので、名前と住所を書き込む。 「撮影前に、簡単なアンケートもお願いします」 面倒な。心の中でぼやきながら、私はしばらく液晶画面と向き合うことになった。 アンケートは自分の性格や趣味、思い出の場所や好きなシチュエーションなどを問われる問題だった。 ほとんどがYES・NOで答えられるような簡単な質問だったが、想定外に数が多かった。 この情報をVRに反映させるのだろうから、細かく問われるのは仕方ないことだけど。 「服装はそのままでよろしいですか」 オーナーから尋ねられ、初めて気が付いた。 今の私の服装は、カジュアル寄りのワンピース。 本当ならもっと着飾るべきなんだろうけど、かしこまった格好をするほど気合いを入れてない。 それに私の場合、清楚系スカートなど身につけようものなら、絶対にぎこちない表情になる。 「このままでいいです」 「では、次世代型Photoプラン(VR)での撮影をはじめます。そちらのドアを開けて、撮影スタジオへお入りください。お部屋には椅子が置いてありますので、お掛けになってお待ちください。AIのご案内とともに、仮想現実がスタートします。ああそれと」 透明なヘッドセットを渡された。 「椅子にお掛けいただきましたら、こちらの専用ゴーグルを装着してください。撮影中はこれを外さないように。出来上がった写真には、ゴーグルが写らないよう特殊な加工を施しますのでご安心を」 以前、VR体験をしたことがあるけど、そのとき身につけたものに比べると、透明ゴーグルは遥かに軽量だった。 何だか、アトラクションに乗る前みたいでドキドキしてしまう。 私は、案内されるままに撮影スタジオの扉を開けた。
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