藤写真館へようこそ

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呆気に取られる私を尻目に、おじいさんはシワを深くして笑った。   「二人とも、本当におめでとう。もうすぐ結婚式だね」 「え……、え!?」 誰と、誰が結婚するって? まさか、私とこの見知らぬ男性が?   「あ……ああ! そういう設定ってことね?」   びっくりした。 本当に結婚話が進んじゃってるのかと思った。 さすがにそんなわけない。 これはVRの中でのお話。 あくまでフィクションなのだ。   「それじゃあ、入籍の記念に。僕から一枚プレゼントしよう。二人ともそっちへ移動して」 「はいはい」   男の人が私の手を取り、アンティークな木製椅子に座らせる。そして、彼自身も私の斜め後ろに立つ。   「え、あなたも映るの?」   「おいおい、さっきから何言ってるの。俺、きみを怒らせるようなことしたかな? 結婚前に一緒に記念撮影したいって言ったの、()っちゃんじゃないか。もう、いいからカメラのほう向いて」   頭を両手でがしっと挟まれて、無理矢理、前を向かされる。 なんて強引な。 仮想現実なんだから、もう少し優しい男の人に設定してくれたっていいのに。 でも、なぜだろう? 妙にしっくり、隣におさまるような気がするのは。 私はこの人と結婚する。 ふたりで一緒の家に住んでいるさまが、ありありと想像できる。 これも、リアルにいない二次元男性だから? 二次元なら私が気に入るのも当然だよね。 いや、VRだから、三次元に入るのかな。 このゴーグルを外したら、きっと消えてしまうんだろうな。 そう思うと、ほんのちょっとだけ寂しかった。 「はい。じゃあ沙都子ちゃん。こっち見て笑ってね」 おじいさんがカメラを構えて手を振る。 「(そう)ちゃんもね」 「えっ、そうちゃん?」   私が振り返ろうとした途端、シャッター音が響いた。
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