山好きに悪い人はいない

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私がそのまま望遠鏡を覗いて、自分の部屋のベランダを見ていると、何か動くものが見えた。 少し上に視線を移すと、屋上から垂れたロープにつかまって、人がするすると降りてきているのが見えた。 私は食い入るようにその人影を見つめた。 その人影は、私の部屋のベランダに降り立った。 そして、こちらを振り返った。 その瞬間、カシャンと音がして、視界が真っ暗になった。望遠鏡の利用時間が終わってしまったのだった。 財布にはもう100円玉はなかった。 けれど、視界が暗くなる直前、私はその顔をはっきりと見た。 そして、私は悟った。 山好きに悪い人はいない とは 限らない。
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