山好きに悪い人はいない

事件から1か月後、結局私は、会社を辞めることにした。

実家に帰って、しばらく休み、気力を取り戻して、新たな場所でやり直したいと思ったからだ。

最後の出社日、上司に、最後に少し飲まないかと誘われた。

上司は何もしてやれなくて申し訳ないと言った。

私は充分に助けていただきましたとお礼を言った。

私達は小1時間ほど話しながら飲んだ後、店を出た。

上司は、彼を殺した犯人は捕まったのかと聞いた。

私はただ、首を横に振った。

彼は家まで送ろうと言ってくれたが、まだそれほど遅い時間でもないので、大丈夫だと断った。

私達はそこで別れた。