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終落
空の脅威。飛空艇ディヴァーン。
嵐の天を駆ける空中軍艦として知られる。
空の戦で敵う者はなし。国の軍事において重要な役目を任されており、他国にとっては喉から手が出るほどの存在価値があるとてつもない兵器である。
国旗として誰一人として知らぬ者なき――国を司る誇り高き黒い鷹の紋と、軍旗として皆の士気を高め敵対せし相手を圧倒する――軍の象徴とされた白い蔦と青薔薇の模様は、もちろん機体にも大きく描かれており、その存在感たるや同胞ですら畏怖を抱く。
大陸中と言わず海の向こうにもその名が轟き渡るのは、軍事大国の筆頭ロゼス帝国。どこにも属さない完全なる一匹狼の国だ。
今統べているのは名のある将軍。国のトップに君臨するからには、それなりの器量がなくてはならない。政敵を生まない優れた統率力を持ち、加えて武にも智にも秀でた者でしか務まらないしなにより耐え難い。
国の顔であり命より重い責を負い民を守る盾役で、常に危険に脅かされて精神を擦り減らしやすく負担の大きい立場で、遠く望もうと理想に近づくには困難で、あまりにも理不尽かつ不自由な高過ぎる地位。
束ねた軍人達と一丸となって、国を使命にかけて守り続ける。国の命運や存亡はその手にかかる。戦功も肩書も己の命の終を決める権利すら捨ててまで、果たして意志を貫き通せるのか。並のものなら否。ただの自信家には荷が重過ぎて到底堪えられない。
この帝国軍で選ばれし精鋭達が益々国の攻守を強固かつ不動のものにする中で、軍の支柱を担う戦力として国の脅威度と注目度を高めている負け知らずの浮遊要塞――それがこの鋼鉄の塊"ディヴァーン"なのだ。
退路のない空での応戦……秘めし底力を目にもの見よと、こぞって軍隊はディヴァーンの本領を発揮する。雨のような連続射撃と共に空の敵を逃さず仕留め、そしてみるみる内に追い込み壊滅させてゆく。弾を喰らって悲鳴を飲み込んだときには、もう遅く。木端微塵に跡形もなく散り散りになる。遠隔爆破もお手の物なのである。
その後は舞う火花の美しさに、敵の完全終了を報せる音と景色に、勝利の歓喜が飛空艇内部で響き渡るのだ。ディヴァーンとは、ロゼス語で"空を灼く閃光"という意味を指す。まさにその通り。空で敵を灼き消す弾を浴びせ、閃光と共に屠る。名を冠するに相応しい戦艦なりと皆頷いて当然。
弱小者ならば泣いて跪いて許しを求める。臆病者ならば縋りつく前に尻尾を巻いて逃げ出す。力に目が眩む愚者は浅慮にも欲をかき支配できないかとも考えるだろう。それ程の強大な力には、人は屈するか……あるいは惹かれるか、だ。
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