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放課後覗き見サンバ
文化祭本番もいよいよ明日に迫り、『腕相撲カフェ』の最後の仕上げをした。
看板を立てて、机と椅子を移動して、教室の飾り付けして、調理器具と材料の準備をして、明日の店番シフトを確認して――
えいえいおー!ってみんなで気合いを入れて解散したら、もうすっかり日が暮れてる。
高校で初めての文化祭だしずっとワクワクが止まらない。
「薫。お前、ミスターコンの準備、ほんとに大丈夫なの?」
薄暗い昇降口で靴に履き替えながら薫に尋ねた。
さすがに緊張しているのか、ふだんから無口な薫がいつもの十倍無口だった気がする。
あん、だか、うん、だかはっきりしない返事しながら、薫はスニーカーにデカい足を突っ込んだ。
「――――あ!」
「あ?」
俺の声を聞いて、薫が顔を上げた。
「やべ。忘れ物しちゃった」
「何を」
「弁当箱。忘れるとオカンがうるさいから取ってくる」
「俺も行く」
スニーカーを脱ぎ捨てて靴下のまま引き返すと、後から薫も付いてくる。
バイバーイとクラスメイトに手を振りながら、ふたりで薄暗い廊下を引き返した。
ポスターやら看板やら張りぼてやらが廊下にガヤガヤとはみ出してて、学校じゃなくて遊園地に来たみたい。
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