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「エイト。お前、自分の大事なものが見えてないのか」
薫が真っ直ぐな瞳で俺を問い詰めてくる。何だ。何が言いたいんだ。
そう言われると、俺の大事なものってなんだろう?
真面目に己を顧みているとピッと小さな電気音が鳴った。エアコンの蓋がウィーンと開き、冷えた空気が天井から降ってくる。
「はぁあー……極楽」
神々しい冷気が限界まで火照った肌を冷ましてくれる。気持ち良すぎて思わずうっとりと目を閉じた。
クーラー最高。クーラー万歳。命の洗濯とはまさにこのこと。
英気を養うため、しばしエアコンの風を全身に浴びた。
今日から二学期。高校は家から近いから、8時過ぎに出れば間に合う。でもその前に帰ってシャワー浴びないと。
ふたたび目を開けると、薫がまだ俺を見つめていてギョっとした。
「……なンだよお前は」
「エアコン、いつ修理来るんだ」
「あー、何か混んでるらしくて……来週の水曜だっけな」
「それまで俺んとこで寝るのか」
「うー……」
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