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どうしようかな。薫のとこに来ても結局暑いのは変わらんし。やっぱリビングに布団下ろすか。
「6時50分にしよう」
答えに迷っていると、薫が突然そう宣言した。
「タイマーを?」
「そうだ。夜も10時10分まで延長してやる」
「お前さ、心が広いのか狭いのかどっちかと言えば狭いよな」
嫌味を言ってやると薫の真っ直ぐな眉毛がわずかに歪んだ。
「仕方ない。6時40分だ」
「ケチだなぁ。お前、電気の消し忘れを根に持つタチだろ。モテねぇぞ」
「分かった。大盤振る舞いで6時でどうだ」
「これ、夜中付けっぱまで譲歩すんの待ってたら学校遅刻するな」
部屋が涼しくなってようやく気力が回復してきた。ぐったり体を起こすと薫も一緒に起き上がる。
自分の部屋はいま頃サウナだろうけど、シャワー浴びて制服に着替えないといけないから戻るしかない。
「じゃ、またあとで」
俺と薫は同じ高校に通っている。
俺の頭脳では奇跡レベルの難関校。薫はもっといいとこ行けたはずなのに、家から近いという理由だけで同じ高校を選んだ。
ベランダに出た瞬間、凶悪な朝日のせいで回復したはずのHPがまた低下する。エイト、と背後から薫が俺の名を呼んだ。
「なに」
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