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エピローグ
その後、空と凛は宝くじで手に入れたお金で、海外旅行へ行った。
着いた先は、カナダのブリティッシュ・コロンビア州だ。
二人は船着き場で海を見ていた。凛は日本の海とどこか違う雰囲気を肌で感じていた。
「昔、ここに住んでいたんだ」
空は言った。
「小さいころから転勤族でね。ここには五年くらい住んだよ」
「……」
「いろいろな場所に行くうち、面白い人にも出会ったんだ。例えば、近所のお姉さんとか。小説家を目指していて、僕のことを題材に小説を書いてたよ」
「読ませてもらったの?」
「いや、盗み見ちゃった。それを見て、少し前向きに生きようと思ったんだ」
「空、主人公になったのね」
すごいわ、と凛は言った。
「そんなことないよ、泣いてばっかりだったから」
空は懐かしい空気をすうっと吸い込んだ。
「じゃあここは、空のちょっとした故郷なのね」
凛は澄んだ空を見上げた。
「うん、そうなるね」
「……もう。空、またあの言葉を言うの忘れているわ」
「あの言葉?」
「——自分の故郷に、『ただいま』を」
(了)
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