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2.結果
抽選日当日。
——どうしよう。このままじゃ、帰れない!!
空の顔は真っ青だった。
周りの人々は、今回も当たったぞとか仕事のご褒美に何を買おうかとか幸せそうな笑顔で溢れていたのに、空だけは違う。
当てる自信はかなりあった。というか社員全員当たっているから、自分がハズれるなんて夢にも思わなかったのだ。
このままでは愛しの彼女に大目玉どこか同棲解消をされるかもしれない。
かなりの危機感を抱き、空は会社を出た。
* * *
「それで、俺のところに来たのか」
空は大学の頃の友だち、牧野を緊急招集した。
「ごめん、牧野。ショックが大きくて、冷静になれなかったんだ」
「連絡してもらう分には全然構わないぜ? 久しぶりに会えて嬉しいよ」
「うぅ……。ありがとう、牧野」
空と牧野は駅前の居酒屋に来ていた。
時刻は夕方の十九時で、家にいる彼女には行きたくないのに、会社の先輩に誘われたと嘘をついてしまった。
「で、いくら使ったんだ?」
「先月の給料全部」
空はモジモジした。
「バッカだな!」
牧野はゲラゲラと笑った。
「だって……」
空は半泣きである。
「彼女……凛ちゃんを旅行に連れて行きたくて……。いつも節約頑張ってくれてるから、疲れを癒してもらいたかったんだ」
完全に僕のエゴだけど……。と空は付け加えた。
「しょうがないな」
牧野は答えた。
「半分くらいなら、貸してやるよ。生活費」
「え!? いらないよ!!」
空は大声を上げた。
そして項垂れると眉毛を八の字にした。
「せびたように聞こえたよな、ごめん」
「……俺と小池の仲なんだから、甘えてくれてもいいんだぞ。昔から、お前は借りた物はしっかり返すじゃないか」
「いいや、いらないよ」
「本当かよ」
「うん。でも、今日の飲み代は奢ってほしい」
「フハハッ。OK」
「……ありがとう」
「それはそうとして、どうして俺は呼ばれたんだ?」
メッセージの内容を見て、てっきりお金の話かと思った、と牧野は不思議がっている。
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